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「ミーナパ」

 
 ミーナパは東インドの漁師の家系の者でした。彼の師はマハーデーヴァ(シヴァ大神)でした。彼は世間のシッディを獲得しました。

 カーマルーパ向こうにあるイタという海では、すべての漁師たちが魚を捕獲し、常に市場でそれを売っていました。ある漁師が木綿の釣り糸に釣り針をつけて、その先端に肉をつけ、海に投げ入れました。ついに大きな魚がかかりました。すると大魚は釣り糸を遠くに引っ張ったので、漁師は海の中に沈んでしまいました。大魚はその漁師を飲み込みましたが、漁師はカルマの力により、大魚の胃の中で生き続けました。

 一方そのころ、女神ウマーは、マへーシュワラ(大自在主=シヴァ大神)に、教えを求めていました。
「私のこの教えは誰にも明かすことはできない。これは大変な秘密なので、海の中に堂を建てよ。そこで説こう。」
と、マへーシュワラは言いました。
 マへーシュワラの言葉の通りにしたのち、その海堂の中で、女神ウマーは教えを聴聞しました。そのとき、海堂の下に例の大魚がやってきました。

 マへーシュワラが教えを説いていると、女神ウマーは眠りに落ちてしまいました。マへーシュワラが女神ウマーにわかったかと尋ねると、漁師が「わかりました」と答えました。漁師が法を聞いていたのでした。
 女神が眠りから覚めると、説法はすでに終わってしまっていました。彼女は教えを求めました。マへーシュワラは「今、説き終わったところだ」と言いました。女神は、
「私はこの清らかな教えを、途中までは聞きました。それから眠りに陥ってしまいましたので、全部は聞いていません。」
と答えました。
「では、『わかりました』と言ったのは誰なのだ。」
 女神ウマーは答えました。
「私ではありません。」

 マへーシュワラが優れた視力で外を観察すると、海堂の下の魚の胃の中にいる人間が教えを聴聞しているのが見えました。マへーシュワラは、
「私の教えを聞いていたこの者は私の弟子になったのだから、私と誓いを一つにする者である。」
と思い、漁師にイニシエーションを与え、それから12年間、その漁師は魚の胃の中で修行をしました。

 その後、シュリータパリの土地の漁師が大きな魚を捕獲し、それを引き上げました。漁師は、
「この魚は重いから、この中から金や銀、その他の貴重品がいくつか出てくるだろう。」
と思いました。魚の胃を切り開くと、男があらわれました。男は、漁師に問われると、
「私もかつては漁師だった。だが、これこれという名の王の時代に、この魚に連れ去られ、飲み込まれたのだ。」
 そこで人々がその年数を数え上げ、12年という数字に達すると、彼らは非常に驚き、かくして、ヨーギー・ミーナパという名前で有名になりました。
 すべての人から布施を受け、ミーナパは海辺の地面の上で踊りました。しかし足が大地に跡をつけることはありませんでした。しかし石の上で踊ると、足が沈み込みました。誰もが驚きました。彼は、石の上に立って歌いました。

 過去に積み重ねたカルマが結実し、
 今、教えを信じることによって、
 貴重な特質がこのようにして生じた。
 素晴らしき私の貴重な心よ!

 このように彼は、以後500年間、生ある者たちの利益をなしました。彼は「ミーナパ」「ヴァジュラパーダ」「アチンタパーダ(思考によって汚されない)」と三通りの名前で知られました。
 最初に世間的なシッディの成就を獲得してから、彼は一歩一歩、菩薩のステージの道を歩み、その身のままで、ダーカの世界へ行きました。

 師ミーナパの伝記、終わり。

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