「パーンドゥ兄弟の結婚」
(15)パーンドゥ兄弟の結婚
☆主要登場人物
◎ドルパダ・・・パンチャーラの王。ドローナに復讐心を持つ。
◎ドローナ・・・クル兄弟とパーンドゥ兄弟の武術の師。
◎ドラウパディー・・・ドルパダ王の娘。アルジュナと結婚するために生まれてきた。
◎クンティー・・・パーンドゥ王の后。パーンドゥ兄弟の母。
◎アルジュナ・・・パーンドゥ兄弟の三男。クンティー妃とインドラ神の子。弓、武術の達人。
◎ドリシュタデュムナ・・・ドルパダ王の息子。ドローナを殺すために生まれてきた。
◎ドゥルヨーダナ・・・クル兄弟の長男。パーンドゥ兄弟に強い憎しみを抱く。
◎カルナ・・・実はパーンドゥ兄弟の母であるクンティー妃と太陽神スーリヤの子だが、自分の出生の秘密を知らず、ドゥルヨーダナに忠誠を誓う。
パンチャーラの王であるドルパダの娘、類まれな美しさで知られるドラウパディーが、適齢期に達し、婿選びの催しを行なうことになりました。
パーンドゥ兄弟たちは、それに興味を抱きましたが、口にはしませんでした。しかし母親のクンティー妃は、息子たちの心を見抜き、こう言いました。
「私たちがこのエーカチャクラの町に住むようになってだいぶたちますから、そろそろ他の土地へ移るときが来ているように思います。ここの山や谷などもそろそろ見飽きてきましたので、きれいで裕福だと評判の高い、ドルパダの王国に行ってみようではありませんか。」
このように言ってクンティー妃は、息子たちのプライドを傷つけずに、息子たちのひそかな思いをかなえようとしたのでした。
ドルパダとドローナは、表面的には和解したように見えながら、心の中ではドルパダは、ドローナに受けた侮辱を忘れることはできませんでした。そこでドルパダは苦行に励んで、ドローナを殺す息子と、アルジュナと結婚する娘を授かるよう祈り、こうして授かったのが、息子ドリシュタデュムナと、娘ドラウパディーでした。
なぜアルジュナと結婚する娘を願ったのかというと、アルジュナはドローナのお気に入りだったので、自分がアルジュナの叔父ということになれば、立場的にも強くなりますし、またドローナは自分に対して手を出せないと考えたからでした。
よって、一応婿選びの催しが行なわれたとはいえ、父親であるドルパダは、ただドラウパディーを、アルジュナに嫁がせたいとだけ考えていたのでした。
そこで婿選びの儀式は、変わった方法で行なわれました。
巨大な鉄製の弓が用意され、姫の求婚者たちは、その弓を引いて、回転する円盤の中央に空けられた穴を通して、的に矢を当てることが要求されました。ドルパダは、わが娘の息子となる者は、このような離れ業ができなくてはならぬ、と宣言したのです。
なぜドルパダがこのような条件を設けたのかというと、アルジュナは世界一の弓の達人であり、このような芸当ができるのは、アルジュナぐらいだったからです。
ドラウパディーは大変な美しさで知られていたので、この婿選びの儀式には、剛勇をもって知られるたくさんの王子たちが、インド中からやってきていました。その中にはドゥルヨーダナやカルナなどもいました。また、見物としてやってきていた観衆たちも大勢集まっていました。
そして王子たちは次々と、その巨大な鉄の弓矢を引くことに挑戦しましたが、その弓はあまりに重く、弦はあまりにきつかったので、すべての王子たちが失敗してしまいました。
するとそこへ、一人のブラーフマナが立ち上がり、弓をとりました。それはブラーフマナに変装したアルジュナでした。アルジュナはこともなげに弓を手に取ると、続けざまに五本の矢を放ちました。矢は回転する装置の中央を通り抜け、見事にすべての矢が的に的中しました。
この出来事に、観衆は大歓声をあげました。ドラウパディーはアルジュナに近寄って、その首に花輪をかけ、恋焦がれる眼でアルジュナを見つめました。
こうしてドラウパディーを妻とする権利を得たアルジュナは、家に帰って、母親のクンティー妃に、こう言いました。
「母上、今日はとてもすばらしいものを手に入れました。」
するとクンティー妃は、アルジュナが何を手に入れたのかをよく聞かずに、
「そうですか、それではいつものように、お前たち五人兄弟で、仲良くわけなさい。」
と答えました。
パーンドゥの五兄弟は、これを母親の命令と考え、ドラウパディーを、五兄弟共通の妻とすることにしたのでした。
ドルパダは、ドラウパディーが自分の願いどおりにアルジュナの妻となることになって大変喜びましたが、同時に五兄弟共通の妻となるという話を聞くと、
「そのような、伝統に反する不道徳なことは許されぬ!」
と反対しましたが、最後には折れ、かくしてパーンドゥ五兄弟とドラウパディーの結婚式が挙行されたのでした。
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