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「ナーグ・マハーシャヤ」(6)

 ある日、ラーマークリシュナは信者の一人に、こう言いました。
「医者、弁護士とブローカーが、宗教的な真実を理解することは非常に難しい。」

 たまたまナーグは、この言葉を耳にしました。ナーグは医者でした。
 これはラーマクリシュナが、その信者のための待機説法として言っただけだったのかもしれません。どちらにしろナーグに対して言われた言葉というわけではありませんでした。しかしナーグは、ラーマクリシュナが発された言葉は、どんなことであれ絶対的真実と考えていたため、彼はその場で、神の実現に障害となる職業を続けるべきではないと決断しました。ナーグは家に帰ると、その日のうちに彼の薬箱と医学書をガンジス川に投げ捨てたのでした。

 ナーグが医者を辞めたことを知って心配した父のディヤンダルは、知り合いに頼んで、ナーグを新しい職につかせました。これによってナーグは、以前よりも頻繁にラーマクリシュナを訪ねることができるようになり、また自分の瞑想の時間も取れるようになりました。

 ラーマクリシュナのもとに通ううちに、ナーグの中で現世放棄の精神はますます高まっていきました。ついにナーグは現世を完全に放棄して出家修行者となることを決心し、ラーマクリシュナの許可を得るために、師を訪ねました。
 師の部屋に入ると、ナーグがまだ何も言わないうちに、ラーマクリシュナはバーヴァ・サマーディの状態に入ったままで、こう言いました。

「家住者としてとどまることに何の害があろうか。ただ心を神に固定しておきなさい。家住者の生活は、要塞の中から戦うようなものだ。
 お前の生活は、家住者にとって真の理想となるだろう。」

 ナーグは驚きました。自分に燃えるような現世放棄の心を起こさせたその人が、現世を捨てずに家にとどまれと言っているのです。しかしラーマクリシュナの言葉はすべて絶対的真実として受け入れていたナーグは、それに従うしかありませんでした。

 出家することは諦めたナーグでしたが、このころから、彼の中に現世的な価値観や傾向などは、すべて跡形もなく消え去っていました。
 また彼は、父親に対しても、世俗的なことを考えさせないようにしていました。彼は常に父親にさまざまな宗教書を読み聞かせました。また、くだらない噂話をするために父を訪れる人を非難しました。

 また別の折、出家への願望をまだ心に残しているナーグに対して、ラーマクリシュナは再びこう言いました。

「お前は家住者として家にとどまり続けなさい。家族は何とかして最低限の生活費は得るであろう。お前はその心配をしなくてもよいであろう。」

「どうして人は家庭にとどまることができるのでしょうか。どのようにすれば、揉め事などの中においても心を動かさないでいられるのでしょうか。」

「たとえお前が家住者にとどまるとしても、何一つとしてお前を傷つけることはできないのだよ。人々はお前の生き様を見て驚くだろう。」

「私は家住者としての生活を、日々どのように過ごせばよいのでしょうか。」

「お前は何もしなくてもよい。ただ常に信心深い人と一緒にいなさい。」

「私のような無智な者が、どうすれば信心深い人を見分けることができるのでしょうか。」

「いや、お前は彼らを探さなくてもよい。お前は家にいなさい。信心深い人々のほうから、お前のもとにやってくるであろう。」

 

つづく

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