「チャマリパ」
「チャマリパ」とは、「靴屋」という意味です。
ヴィシュヌナガラという町には18ほどの異なった職人の家系があり、彼はその中の靴職人の家系に属していました。彼はヴィシュヌナガラで、古い靴を直したり、新品の靴を作る作業をし、時間は完全にそれらの仕事にとられていました。
ある日、あるヨーギーが通りかかりました。彼はすぐに靴の仕事を打ち切ると、その修行僧の足元に敬礼し、有意義な会話をかわしました。
「私は輪廻に失望し、唯一のダルマを実践したいと思っています。しかし、法友に出会ったこともなく、未だダルマの扉にさえ入ることができていません。お願いします。今生と次の生の利益のために、唯一のダルマを教えてください。」
「あなたが教えを実践することができるなら、与えましょう。」
とヨーギーは答えました。
そこで靴職人はヨーギーに、自分のようなシュードラ(奴隷階級)の家で、食事をしてくれるだろうかと尋ねました。
ヨーギーは、
「今夜、あなたの家に行って食事をしよう。」
と答えました。
靴屋は、妻と家の者たちに、ヨーギーが来ることを告げました。
その夜、ヨーギーが靴職人の家に戻ると、靴屋は座を設け、ヨーギーの足を洗い、さまざまな食物を彼に布施しました。妻と娘はヨーギーに必要な品をすべて布施し、油を使って身体をマッサージしました。ヨーギーは喜んで、靴屋とその妻にイニシエートし、教えを授けました。
煩悩と観念を靴の革にして、
親切と慈悲という靴底の板の上に、
グルの教えという針と
八つの世俗的法則の放棄という糸を使って、
正しく縫いなさい。
そうすれば、奇跡的な結果である靴が生じる。
それは大いに素晴らしい法身としての靴である。
誤って観察するならば、それは知られない。
認識対象がないこととしての糸、師の教えと自分の体験としての針によって、
すべての分別および印としての皮を用い、
喜びと不快を捨て、
おのずから立ち上がるダルマカーヤという靴を作ることを瞑想しなさい。
靴職人は尋ねました。
「このようにして観想すると、どのような経験が生じるのでしょうか?」
「まず輪廻に失望する印が生じます。それから、徐々にもろもろの元素が、ダルマの性質へと変わっていきます。」
こう言うと、ヨーギーは消えました。
靴屋は自分の家を出ると、静かな場所へ行き、そこで瞑想しました。のちに、グルが教えたように、次第に印が生じました。自分の仕事からの類推によって、靴屋は六つの根本的なゆがみと、その歪みの背景にある無智を理解し、明快な理解を生じさせ、グルの教えの靴をはき、無明の世界をくまなく踏みつくしたのでした。このようにしてチャマリパは12年間修行し、無明などの汚れを清め、マハームドラーの成就を獲得しました。
その12年の間、昼も夜も気づきませんでした。靴仕事はすべてヴィシュヴァカルマン(天の工匠の神)が行なったので、ヴィシュヌナガラでは靴職人が瞑想と功徳を獲得することに成功したことは知られていませんでした。
あるとき、靴職人の同業者の一人が見に行くと、靴屋が瞑想していて、ヴィシュヴァカルマンが働いているのを見て、仰天しました。別の者たちも一人また一人と見に来て、ついにはすべての人がその光景を見ました。彼らは集まって、靴屋に教えを請いました。
彼は、グルに依存することの恩恵を説きました。そして、ヴィシュヌナガラの人たちに多くの教えを説きました。
靴職人はヨーギー・チャマリパという名前で、いたるところで知られました。彼は数え切れないほどの魂の利益のために働いてから、最後にはまさにその身のままで、ダーカの世界へ行きました。
師チャマリパの伝記、終わり。
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