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「クリシュナ物語」第一回(2)

【本文】

 さて、ヤドゥ族の王シューラの息子であるヴァスデーヴァは、デーヴァキーという女性と結婚式を挙げた後、自分たちの新居に向かって、馬車で移動していました。
 そのとき、デーヴァキーの従兄であるカンサは、従妹の結婚を喜び、自らその馬車の手綱を握り、御者となっていました。

 ところがその時、天から姿なき声が生じ、カンサにこう告げたのでした。
「ああ、なんと愚かな男だろうか。お前が手綱をひく少女から生まれる八番目の息子が、お前を殺すであろうに!」

 邪悪な心を持つカンサは、その声を聞くと、ただちに妹のデーヴァキーの髪の毛をつかみ、剣で殺そうとしました。
 それを見たヴァスデーヴァは大変驚き、カンサに懇願してデーヴァキーの殺害を思いとどまらせようとしましたが、カンサは聞き入れませんでした。そこでヴァスデーヴァは、熟考の上、デーヴァキーを助けるために、カンサにこのように言いました。

「ああ、偉大なるお方よ。今後、デーヴァキーから息子が生まれるたびに、私はその子をあなたに手渡すようにいたしましょう。ですからデーヴァキーの命はお助け下さい。」

 ヴァスデーヴァは常に真実のみを語り、嘘をつくことができない男でした。それを知っていたカンサは、ヴァスデーヴァの提案を聞いて喜び、デーヴァキーを殺すことを中止したのでした。

 はい。まずここで出てくるのは、ちょっと説明すると、カンサっていうのが出てきましたが、このカンサが、クリシュナが倒そうとしている魔族のまあ一番のボスっていうかな、大王みたいな男だね。
 で、このカンサの従妹がデーヴァキー。
 で、このデーヴァキーの旦那となるのがヴァスデーヴァ。
 で、クリシュナはこのデーヴァキーとヴァスデーヴァの息子として生まれるんだね。つまり、クリシュナの敵である大王カンサっていうのは、クリシュナの親戚でもあるわけだな。クリシュナのお母さんの従兄っていうことですね。
 で、よく資料とかで間違っているときがあるんだけど、クリシュナの異名――クリシュナっていろんな名前があるんだけど、その一つとしてヴァースデーヴァっていうのがあります。で、それは「ヴァースデーヴァ」だね。――伸びるんです。「ヴァースデーヴァ」。で、このお父さんの名前は「ヴァスデーヴァ」っていうんです。ちょっとややこしいんだけど(笑)。お父さんはヴァスデーヴァ。クリシュナの異名はヴァースデーヴァね。はい。
 お父さんがヴァスデーヴァ、デーヴァキーがお母さん。で、この大王カンサは、魔王とはいえ、もちろん従妹の結婚は嬉しかったわけだね。で、ご機嫌で馬車の手綱を握り、御者をやってたら、天から「愚かなことだ」と。「おまえが手綱をひく少女から生まれる八番目の息子が、おまえを殺すのだ」と。ね。で、普通はもちろん、そんなこと言われたって従妹を殺したりしないわけだけど、このカンサは非常に邪悪な心があったので、そんな自分を殺すような子供を産む従妹は生かしちゃおけんっていうことで、その場で殺そうとするわけだね。で、そこでまあその旦那さんのヴァスデーヴァはなんとかそれを止めようとするんだけど、聞かないと。そこで熟考し、まあ苦肉の策としてこういうことを言うわけだね。つまり「デーヴァキーから息子が生まれるたびに、あなたに渡します」と。「ですからデーヴァキーの命はお助けください」と。つまり、この約束をしてしまったら、実際その子供を渡さなきゃいけなくなっちゃうわけだけど、今この妻が殺されるよりはいいと考えたんだね。つまりこうでも言わないと、今この妻がこの場で殺されてしまうと。だからなんとかこの場を逃れるために、「あなたを殺すと言われるその子供たちをみんな捧げますから」っていう約束をしたわけだね。
 で、カンサはその約束を受けた。なぜかというと、ヴァスデーヴァは真実しか語れない男だったと。
 はい。これはですね、『マハーバーラタ』とか見てもそうだけど、よく、現代のわれわれの感覚よりも、真実、つまり嘘をつかないということが、大変重んじられます。まあ昔の例えば日本の武士道とかにすごく近いかもしれないけど、もう完全に、男にっていうよりは、人間に二言はないと。もう、そういう軽い、なんていうかな、言葉を吐いてはいけないっていうか。そういう思想はやっぱり強いんだね。で、特にこのヴァスデーヴァっていう人はそれで有名だった。つまり、絶対に決して嘘をつくことができない男だったと。だからカンサもそれをまあ受け入れたわけですね。で、なんとかまあデーヴァキーが殺されるのは防がれたっていう部分ですね、ここはね。

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