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◎八斎戒

【本文】
 殺生をやめ、盗みをせず、性交を断ち、嘘をつかず、酒を断ち、非時食への欲望を捨て、高い床を愛好せず、歌や踊りや華美な飾りを断つこと、これら聖者の戒に順ずる八つのものを守るならば、布薩者には、男であっても女であっても、楽しい欲天が恵まれるでありましょう。

 はい、これはね、八斎戒といって、天に生まれる八つの戒めなんだね。だからみなさんも、さっきともつながるけども、もし最低限天に至りたかったらこの八つを守るといい。
 殺生をやめ、盗みをやめ、性交をやめる。
 性交をやめるというのは、簡単に言うと、さっきも言ったように、甘い意味での「性交をやめる」というのは「浮気をしない」ということなんだけど、本気で高い世界に行きたかったら、完全に性的な行為をやめる。セックスもオナニーも含めて、あるいは性的なイメージも含めてやめる。
 で、嘘をつかず、酒を断ち――「非時食への欲望を捨て」というのは、単純に言うと、一日一食ということです。ただ仏教の出家修行者の伝統だと、それはしかも午前中なんだね。午前中に托鉢に行くんだね。午前中に托鉢に行って、それを得られたら一回だけ食べていいですよと。昼過ぎたらもう駄目ですと(笑)。昼過ぎたらもう托鉢しちゃいけないんです。ただ現代のわれわれにとっては、別に時間は気にしなくていいと思う。ただ一日一食ということです。これはちょっと厳しくなってくるね、ここからね。
 それから、高い床を愛好せず――これは高い床と書いてあるけど、もうちょっとリアルに言うと、粗末な布団で寝ろということです。安楽な寝床で寝るなということです。わたしは今、ヨーガ教室のフローリングに何もしかずにただそのまま寝てるけども(笑)、そういう感じでただ床に寝るとかね。あるいは冬はわたしはあそこに寝袋で寝るね、さすがに(笑)。さすがに冬は何もないと寒いので、寝袋だけど、夏は何もなしでただ床に寝ると。フローリングじゃなくてもいいけど、たとえばじゅうたんとか畳で充分だと。そういう寝床で寝ろということだね。
 それから、歌や踊りや華美な飾りを断つ――つまり歌や踊りを見に行ったりとか、自分が歌ったり踊ったりとか、あるいは華美な飾り――いろいろ化粧したり、いろんな飾りを身につけて自分を着飾ることね、これをやめなさいと。

◎五戒の意味

 殺生をやめ、盗みをせず、性交を断ち、嘘をつかず、酒を断ち――この辺は五戒ですね。この五戒というのは、ちょっと今日は全部詳しくはやらないけども、もちろん全部意味があります。なぜこれをするならば、天に行けるのかという意味があります。
 簡単に言うとね、殺生――これは地獄への道なんです。つまり生き物を殺すとか害するっていうことは、逆に自分が将来害される、あるいは殺されるというカルマを作ります。これを一気に清算する世界が地獄なんです。
 だって考えてみてください。われわれは今まで虫を何匹殺しましたか? あるいは小動物を何匹殺しましたか? わたしは小さいころからあまり殺さなかった。それでも殺しています。わたしね、小さいころに心優しくて(笑)、虫を殺せなかったんだね。殺せと言われても、殺せなかった。でも中学校ぐらいから殺していました。小学校のときは殺してなかったんだけど、みんながあまりに普通に殺しているので、別に悪くないような気がしてきて、中学校のころには蚊とかも殺して、ハエとかも殺してた。でもわたしの場合は、その二、三年だね。二、三年殺してたんだけど、中学二、三年のときにヨーガの本に出合って、そこに不殺生とか書いてあったから(笑)、「あ、やっぱり駄目だったんだ」と思って。わたしはちょっとラッキーだったわけだけど、それでも結構殺してる。そういう教えをあまり知らなかった人は、当然たくさん殺してるでしょう。じゃあ何匹殺したんですかと。おそらく何万何十万殺してます。数にしたらね。
 じゃあそれをですよ、一匹殺して自分が一回殺されるとしたら、人間界じゃ駄目なんだね。だって人間界で一回殺されたら終わりだから。殺されるぐらいの苦しみを、一気に味わえる世界がなきゃいけないんです。それが地獄なんです。よって、殺生すると地獄に引きずり降ろされる。
 同様に、盗み――つまり人のものまで欲しいという貪りに襲われるぐらいの心の状態だと、餓鬼の世界に引きずり込まれます。
 性交・邪淫――これは一つは動物界にわれわれを引きずり込みます。もう一つはね、天に行くには当然徳が必要なわけだけど、むやみに現代人みたいにどんどん性的なことをやりまくっていると、もう根本的にエネルギー不足になるんだね。エネルギー不足になると、当然天にはいけません。天というのは、みなさんどう想像しているか分からないけど、もう生きているだけで快楽の世界です。何もしないでもエクスタシーの世界です。でもこの源は、物理的な徳のエネルギーなんです。これは人間が低い性的な喜びで漏らしているのと全く同じなんです。おおもとはね。だから物理的な話として、天で味わうはずのこのエネルギーの源を漏らしていたら、それは行けませんよと。だからできるだけ性的なこともやめなさいと。
 嘘をつかず――これも動物界とつながります。すべてを曖昧にすることによって、無智のカルマが増大する。つまりタマスが増大するんだね。それからあまり詳しくは言わないけども、言葉のカルマというのは、ヨーガ的にいうとアストラル――つまりわれわれの世界の裏側にある波動の世界とかかわっているので、われわれが言葉を正しく使わないことによって、そのアストラル――あるいは色界といってもいいけども――が、ちょっと悪い状態になるというか、ねじくれるというか。それによってこの現象界も、悪い現象が起きるようになります。よって言葉も慎みなさいと。
 はいそして、酒を断つ――酒を断つというのは二つ意味があって、一つは、これは分かりやすい意味で、酒を飲むと当然悪いことをしやすくなる。普段は戒律を守っているんだけど、酒の力によって潜在意識が出て悪いことをしてしまう。これが一つだね。
 もう一つは、酒を飲むことによって意志が――心がコントロール不能になる。酒をいつも飲んでいる人っていうのは、普通の人よりも瞑想がしづらくなります。つまり心の世界がコントロール不能になるんだね。だから死後の世界で、酒とかドラッグもそうだけど、いっぱいやっている人っていうのは、徳を積んでいたとしても、ちょっと非常に曖昧な、あるいはコントロール不能な死後の世界に入ってしまって、なんか変な世界に入ってしまう可能性があります。だから酒も駄目だよと。ここまでは五戒。

◎一日一食

 次に、「非時食への欲望を捨て」――これは一日一食にしなさいということだけども、実際は二食でもいいとは思うけどね。一応厳しく言えば一食にしなさいと。これはいろんな意味があります。一つは、現代みたいに三食は食べてるっていうのは、これは食べすぎなんです。特に主婦とか大変だよ。だって、朝起きると。はい、「今日何作ろうかしら」。で、作るわけです。はい、食べましたと。終わりましたと。ちょっとは休むだろうけど、「昼ご飯、何にしようかな」と(笑)、考えて買い物に行くと。また作ってと。はい、終わりましたと。人によっては十時と三時におやつが入るね(笑)。で、終わったら「夕ご飯何にしようかしら」と――つまり、一日中食べ物のこと考えてる。で、頭もそうだけど、おなかもそうです。まず朝から胃腸が動き出して――これはチャクラでいうとマニプーラ・チャクラ。貪りのチャクラが動き出します。まだそれが完全に消化されないのに、昼にご飯が入ってきます。で、また動き出して。それもまた完全に消化されるかされないかのころに、夕ご飯が入ってきます。だからずーっと貪りのチャクラが動き続けるんだね。これはもうはっきりいって論外(笑)、三食っていうのは。まあせいぜい二食。ヨーガとかでは、一食か二食にしろっていってる。いきなり一食というのは厳しいかもしれないので、二食でもいいと思います。もしできるなら一食にした方がいい。一食にして、心の貪りを断つと同時に、エネルギー的な漏れも防ぐんだね。
 はっきりいって、食事を消化するという行為には、ヨーガでも仏教でも同じ考えですが、火元素を使うんです。火元素というのは、おなかにある火のエネルギー、燃えるエネルギーがあるんだね。この火元素をもっと昇華させて、高い段階にわれわれは上がっていかなきゃいけないんだけど、常にこの火元素が消化に使われていると、なかなか高い境地にいけない。だから一日三食は食べすぎですよと。一食にしておきなさいと。これはだからもう一回言うけども、心における貪りを断つということと、それから肉体的なエネルギーのロスを防ぐということですね。

◎粗末な寝床に寝る

 それから、安らいだ布団に寝るなと。これはわたしの経験も含めていうと、わたしみたいに床にごろんと寝ていると――わたしはもちろんもともとは、学生時代とか、ふわふわしたベッドに寝ていたし、それからどこかホテルとかに旅行して泊まったときには、当然ふわふわしたベッドに寝るよね。みんなもそうだろうけど、朝目覚めましたと。「ああ、もうちょっと寝ていたいかな」ってなるじゃないですか。床に寝ているとあまりなりません、それは(笑)。はっきりいって、床に寝るって痛いです(笑)。痛いというか固いから。ヨーガとかでは、固い床に寝た方が疲れが取れるっていわれるんだね。確かにそれもあるかもしれないけど、でもリアルにいうと痛いです、はっきり言って(笑)。体がちょっと痛くなります。痛くなるし、あまり長く寝ていたいとは思わない。眠いから寝るんだけど、朝、ぱっと、四時とか五時に目が覚める。で、あまりそのままごろごろと「もうちょっと……」とは思わない(笑)。ぱっとそのまま起きたくなる。それが一つあるね。つまりあまり怠惰を貪らなくなる。
 もう一つは、徳の消耗を防ぎます。つまり豊かな布団で、「ああ、気持ちいいなあ……」――これは徳が減ります。そんなくだらないことで徳を減らすなと。だからできるだけ粗末なところで寝なさいと。
 お釈迦様の時代なんて、頭蛇の行では――「頭陀の行」っていう修行があるんだけどね。徹底的に徳を減らさない修行――それでは、横にさえなるなっていうんだね。横にならないで座って寝なさいと。
 わたしは昔ね、一年ぐらいそれをやっていたことがある。座るといっても椅子とかね、あるいは机にこう寄りかかって寝たりするんだけど、横にならないっていうことを一年ぐらいやっていたことがあるけど。もちろん無理してやる必要はないよ。みんなが絶対にやる必要はないけども、それも一つのやり方としてはあるね。あるいは粗末なところに寝ると。これによって徳を減らさない、あるいは怠惰さに打ち勝つということだね。
 それから、歌や踊りや華美な飾りを断つ。これは現世の欲望を断つというか、現世とのつながりを断つということだと思います。

◎ウポーサタ

 この八つの戒を完璧に二十四時間守れるならば最高だと。しかし、「守れない場合はどうするの?」っていう話がある。これがここに書かれている「布薩」なんだね。布薩というのはウポーサタというんだけど、これはお釈迦様の時代から――お釈迦様というのはすごくリアリストだったと思うね。「何? お前守れないのか! じゃあ駄目だ!」――じゃないんです。「守れないのか? じゃあ月一回は守れ」と(笑)。あるいは、「できるなら満月と新月、二回守れ」と。「いや、もっとできるならば、満月と新月とその中間の四回守れ」と。あるいは、「もっとできるならば、月六回守れ」と。あるいは「八回守れ」と。それはそれぞれのできるパターンに応じてあるんだけど。
 だからわれわれでいうと、われわれは今あまり月のカレンダーってなじみがないから、例えば週一回とかいいと思うね。例えば曜日を決めてね、日曜日だけは完全に戒を守る。だからここでみんなが守れないことって――殺生は多分守れるよね。あるいは盗みももちろんしないだろうと。性交は人によるだろうね、これはね(笑)。それから嘘をつかないというのはできるでしょう。酒も人によるね。酒をやめられないっていう人はいるかもしれない。ここでいう酒というのは、もちろんドラッグとかタバコとか全部含めてです。
 それから一日一食。これは結構きついかもしれない。ちょっと一食はきついっていう人はいるね。
 それから粗末な床に寝る。これもちょっとみんなきついかもしれない。「さあ、明日から布団ひかないで床に寝てください」「え、ちょっとそれは……」っていう人が結構いるかもしれない(笑)。
 それから歌や踊りするなとか見るなとか、あるいは着飾るな。これもちょっときついかもしれない。「いや、ちょっと会社に行ってるから、化粧しないとちょっと……」っていう人もいるかもしれない。
 だからちょっといくつか守れないことが出るだろうと――でもじゃあ日曜日だけは完璧に守りましょうと。「あなたちょっとまだ奥さんや恋人がいて、性的なことをやめられないんですね」と。「じゃあ、分かりました。日曜日だけは絶対にやめてください。日曜だけは一切頭からも性的なことを忘れてください」と。あるいは、「酒やめられないんですか」と。「分かりました、日曜だけはやめてください」、例えばね。あるいは「日曜だけは、床に寝てください」と。あるいは「日曜だけは化粧やめてください」と。だからその日は、外に出なくなっていいと(笑)。外に出なくてもいいから、全部守ってくださいと。他の日はしょうがないと。
 あるいは昔のインドっていうのは、カーストがあるから切実な問題として、例えば漁師に生まれた子は漁師なんです。あるいは堵殺業に生まれたら堵殺業以外の仕事はできないんです。だからお釈迦様が殺生するなと言っても、駄目なんだね。その人の道は、じゃあ出家するしかない。でも出家するまでの信念もないと。「どうしたらいいんでしょうか」と。「分かった、それはしょうがない。社会のシステムとして、君が生き物を殺さなきゃいけないのはしょうがないね」と。「だから月に六回だけはやめろ」――これは、お釈迦様のすごくリアリティのあるやり方だったんだね。つまり全然守らないよりは、月に六回守るだけでも、その人の悪業のカルマにストップをかける。これがウポーサタというんだね。
 これはみなさんもできるだけそれは実践したらいいね。全然やらないよりは、月何回かだけでもやった方がいい。戒律を守るということはね。もちろん完璧に全部二十四時間守れるなら、それに越したことはない。
 もう一回まとめるけども、この八つの戒を完璧に今この瞬間から守れる人は、全部守ってみてください。これは守れないなっていうのがある人は、週に一回決めて、その日だけは守るようにしてください。それがみなさんの、少なくとも天に向かう道だということだね。

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