yoga school kailas

◎一番大事なこと


20080705

心の訓練②

◎一番大事なこと

 今日は「心の訓練に関する七つの要点」の2回目ですね。

 今回からやっと本題に入る感じですね。

 この前段階的なことは前回までにいろいろ言いましたが、もう一回簡単にだけ言うと、お釈迦様から始まる仏教の流れっていうのは、たくさんの要素を含んでるわけですね。で、それは人によって――つまり仏教とは何か、あるいは修行とは何かといった場合、当然見方のポイントが違う。あるいは師匠がいたとしても、弟子に教えるポイントがいろいろ違ったりする。しかしその中で最も――まあ仏教というよりも、修行の世界で一番大事なポイントはいったい何なんだと。それは端的に言うならば、「心の訓練」なんだね。

 つまり教えというものがあって、その教えとは全く違う自分の心の状態がありますと。じゃあこの自分の心っていうのをいかに教えに則って訓練していくか。これこそが一番大事なことだと。

 もちろんさまざまな教えっていうのは、そういった自分の心の変革の補助になってくれてるんだね。例えばいつも言うように、簡単にいうと、ムドラーを毎日やれば気が上がるので、精神状態っていうのはあまり変な状態にはなりにくくなる。ムドラーやっただけじゃ駄目なんだけど、いい状態になりやすくなるんだね。その上で心の訓練的なことをもし心掛けるならば、心は良く変わりやすい。こういう感じでいろんな修行がいろんな形で組み合わされてるわけだけど、エッセンス――つまり一番重要なポイントは何かっていうと、何度も言うけども、心の訓練なんです。つまり、二十四時間、日々いかに自分の心を教えに合わせていくかっていうかな。

 で、それをすごく美しく、分かりやすく書いてるのが『入菩提行論』ですね。『入菩提行論』も言ってみれば、あれは心の訓練の経典といってもいい。

 今日の勉強会の「七つの要点」っていうのも、これも『入菩提行論』よりも、もうちょっと短いコンパクトな形で――これを作ったのはチェカワっていうチベットの修行者ですが――コンパクトにまとめた「心の訓練に関する七つの要点」ということですね。

 前回もちょっと言いましたが、このチェカワという人は修行者だったわけだけど、あるとき前回の勉強会でやった「八つの心の訓練の詩」ってやつね。あれを読んで非常に衝撃を受けて、シャラワっていう師匠のところに行って、心の訓練の伝統を受け継ぐんだね。

 で、不思議なことにこの心の訓練の伝統っていうのは、秘密裏に伝承されてたっていうんだね。秘密裏にっていうのはつまり、いろんな一般的な修行っていうのは公にどんどん伝わっていくんだけど、秘密裏に伝承させる秘密の教えっていうのがある。それはまあいろんな秘密の教えがあるんだけど、この心の訓練の教えも秘密の教えだったんです、最初は。

 なぜかというと、「多分みんなこれは理解できないだろう」、あるいは、「ちょっと誤解してしまうかもしれない」っていう危険性があった。なぜかというと、これから勉強していって分かると思うけど、この心の訓練の背景となっているのは、エゴの放棄、そして菩提心、あるいは慈悲の教えなんだね。

 つまり普通の人間は、もちろんエゴというのを土台に生きてる。つまり自我、自己愛着っていうかな。それを真っ向から否定する教えなんだね、この心の訓練っていう教えっていうのは。だからそれは非常に一般的には説きにくい。

 よって秘密に教えられてたんだけど、あるときチェカワが、ハンセン病患者ね、チベットとかインドってハンセン病患者が多かったわけだけど、ハンセン病で苦しむ人々に何かしてあげられないかと思って、でも何かしてあげたいんだけど、自分にはお金もないし、他にこの病人たちにしてあげられるものっていうのは何も持っていないと。そこで自分が何十年もかけて修行してきた心の訓練の教えのエッセンスともいえる――みなさんがここのヨーガ教室でもやってる「トンレン」ですね。慈悲の瞑想――つまりみんなの苦しみを吸い取って、自分の幸福をみんなに与えるという瞑想。チェカワはこれをひたすらやって、非常に自分が幸福になったって感じてたから、ハンセン病患者の人々に、自分には何も与えられるものがないから、この瞑想を教えたんだね。

 で、さっきも言ったように、これは秘密の教えだった。なぜかというと普通の人は理解できない。だからチェカワも秘密の教えと思ってたんだけど、でもあまりにもその病人たちがかわいそうだったから、それを教えたんです。

 そしたら不思議なことに――まあもちろんやらない人もいただろうけど――それを実践した病人のある人々は病気が治ってしまった。あるいはある人々は、病気は治るまではいかないけども、その病気の苦しみとか恐怖とかがなくなって安らかなまま死んでいった。

 で、そこでチェカワはとても衝撃を受けた。「あ、この教えは万人にとって利益がある」と。そして、それまで秘密に伝えられてきたものを公にっていうかな、多くの人に伝えるようになったっていうエピソードがあります。

 だからそれだけ、われわれにエゴがあるととても受け入れがたいけども、でもわれわれに智慧があるととても強力な力を発する教え、これがこの「心の訓練に関する七つの要点」の教えですね。

◎念正智

 結局これは、いつも言う念正智に関わる教えといってもいい。

 念正智っていうのは二十四時間自分を観察し続ける。つまり自分の――仏教では身・口・意っていいますが、身・口・意っていうのは、身の行ないと言葉と心。で、特に心だね。もちろん身の行ないと言葉も観察するんだけど、一番とらえどころのないのは心だから。

 まずベースとしては当然身の行ないと言葉は観察する。つまり、「さあ、わたしは悪いことをやろうとしてないかな?」、「わたしは変なことをやらないだろうな?」、あるいは「言葉で人を傷つける言葉を言っちゃわないかな?」、あるいは「意味のない冗談ばっかり、わたしは言ってないかな?」――これをチェックする。

 で、それももちろんするんだけど、それプラス、心の観察――つまり「わたしの中に悪しき思いは湧いてないかな?」――これをひたすら観察するわけだね。つまり心の中に監視員を置いて、教えに基づいて、自分の心が決して悪しき方向に向かわないようにチェックする。そして逆に、教え通りの考え方ができるように、本当にもう理想的には二十四時間、一瞬一瞬怠ることなく自己をチェックする。

 だから、これをもし本当に本気でやろうとしたら相当な緊張を伴います。それはそれで全く構わない。逆にそれくらいでなきゃいけないっていうか。つまり二十四時間緊張を伴って自分自身を見つめ続けるんだね。

 もちろんね、ある程度教えが根付いてるとき、あるいは例えば気が上がって非常にいい状態のとき――こういうときは別に緊張はいらない。何でかっていうと、自然にいい状態になれてるから。でも自然にいい状態になれていたとしても、何かのきっかけですぐにまたパッと悪しき心に変わる場合もある。よって、そうならないように常に自己チェックをするわけだね。

 はい。で、その具体的な項目が、この「七つの要点」の教えですね。

 では少しずつ読んでいきましょう。

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