パドマサンバヴァの秘密の教え（６５）「マーラの誘惑」

◎マーラの誘惑

　師パドマはこう仰った。

「マーラに騙されているとき、ダルマの修行者は気づかない。」

　ツォギャルは尋ねた。

「それはどういう意味ですか？」

　師はこうお説きになった。

「有力な人は、プライドと自惚れのマーラに騙されている。

　高位の人は、雄弁と妄想のマーラに騙されている。

　普通の人は、迷妄と愚鈍のマーラに騙されている。

　金持ちの人は、積極的な目的と富を増やすマーラに騙されている。

　ダルマの修行者は、物質的な所有を増やすマーラに騙されている。

　人は、子供を育てるマーラに騙されている。

　礼儀正しい弟子のマーラに騙されている。

　優しい召使や従者のマーラに騙されている。

　嫌われる敵のマーラに騙されている。

　情のこもった身内の言葉のマーラに騙されている。

　美しい飾りのマーラに騙されている。

　優しい声と心地よい言葉のマーラに騙されている。

　自分自身への執着のマーラに騙されている。

　美しさと愛情への憧れのマーラに騙されている。

　惑わされた行為に傾けるすべての努力は、マーラの誘惑である。

　あなた自身の中に内在する五つの毒は、あなたの心のマーラである。

　習慣的傾向としてある六つの感覚対象は、外側の物のマーラである。

　サマーディの味に執着することは、内側の現象のマーラである。

　ゾクチェンの達成を願うのは、見解のマーラである。

　すべての優れた資質もまたマーラである。

　すべての迷妄と、過った信念もまたマーラである。

　故に、最大のマーラはエゴへの執着である。

　それは他のどこにも存在せず、あなた自身の中に存在する。あなたは内側からこの魔を滅ぼさねばならない。

　もしあなたがそれをすれば、魔は外からはやってこない。

　これらのマーラを認識しない人が多すぎるのだ。」