yoga school kailas

「解説・ミラレーパの生涯」第一回(1)

2010年10月27日

解説・ミラレーパの生涯 第一回

 はい。今日から聖者の生涯、今度はミラレーパに入りますね。
 まあナーローパ、ナーローパの弟子のマルパ、そしてマルパの弟子のミラレーパっていうことですね。
 はい。ミラレーパはもうほんとに皆さんにとっては、おなじみだとは思いますけどね。あの、そうですね、チベットでもまあ一、二を争うね、人気のある聖者だね。それはもちろんすごい悟りを達成してるっていうこともそうなんだけど、まあ今日学ぶね、この内容を見たら分かるように、なんていうかな、人生がね、生まれつきの――例えばパドマサンバヴァみたいな生まれつきの大聖者ってわけじゃなくて、まあいろんな人間的なね、部分もあり、で、そういうのを乗り越えて成就した聖者なんですね。それからその彼の歌、ね、歌っていうのは、即興の歌ね。まあドーハーっていうわけですけども、悟りの内容を表わした即興の歌が非常に素晴らしくて、で、それもチベットで語り継がれてきたんですね。ですから、まあ老若男女、そしてチベット仏教っていろんな派があるわけだけど、派を問わず、最も人気のある聖者の一人ですね。
 はい。じゃあこのミラレーパの話に入っていきましょう。

【本文】

 ミラレーパはお金持ちのお坊ちゃんとしてチベットに生まれました。幼名をトゥーパガといいました。
 父と母と妹との四人家族で、その地方で名の知れた大富豪でしたが、ミラレーパが七歳のころ、父が他界しました。
 父は遺言を残していたにもかかわらず、貪りの強い叔父と叔母が、一家の財産をすべて奪い取りました。そしてそれのみならず、残されたミラレーパの一家を、奴隷のように扱ったのです。
 昨日まで良い服を着て良い暮らしをしていたミラレーパ一家は、今やぼろをまとい、奴隷のように働き、物乞いによって食を得るという暮らしになってしまったのです。
 復讐を誓ったミラレーパの母は、ミラレーパに魔術を習いに行かせました。ミラレーパは母の望みどおりに魔術を習得し、魔術によって叔父叔母の子供や親戚や仲間たち三十五人を殺し、復讐を果たしたのでした。叔父と叔母だけは見せしめのために生かしておきました。

 はい。まあちょっときりがいいところで切りますが。まあこれはもともとのね、修行に入る前までのミラレーパの人生ですけども、まずもともとはお金持ちのお坊ちゃんでしたと。ね。そして大富豪だったんだけど、まあ大黒柱であるお父さんが亡くなったと。で、お父さんは残された者のために、もちろんね、遺言を作成してたんだけど、叔父さん伯母さんがね、貪りが強くて、このミラレーパ一家から全財産を奪い取り、しかも奴隷のように扱ったと。ね。
 まあつまりなんていうかな、この当時のチベットっていうのは、まだ――まあインドでもよくこういう話ってあるわけだけど、あまりしっかりとした法治国家じゃないっていうかな。まあ古代のもちろん日本とかもそうだけど、この当時はまだチベットはそんなにしっかりと法律によってね、国が治められてたわけじゃないので、まあこういうことが起こるわけだね。逆にいうと、なんていうかな、人々の良心にある程度、ここら辺のことは任されてるっていうかな。だから当然、悪人がいれば悪人によって、このようにまあ弱い者はね、だまされ、奪われるってことはあったわけだね。だからここまでのことは、ちょっと現代だったら普通なかなかあり得ないけどね。
 まあ特に、なんていうかな、ミラレーパ一家に不備があったとか、何か過ちがあったわけではないわけだけども、ただの貪りによって強引に叔父叔母が財産を奪い取ったわけですね。で、それだけではなくて、昨日までお金持ちのいい生活をしてたミラレーパ一家を、今度は自分たちの奴隷としてこき使ったと。まあそういう、ひどいというかな、いわゆる人生におけるかなり悲惨なね、状況を味わったということですね。
 で、このミラレーパのお母さんっていうのがいるわけですが、このミラレーパのお母さんっていうのはまあものすごい、なんていうかな、ちょっと人間的というか、つまり非常に情が強いんだね。情が強いっていうのは、家族に対するものすごい熱情と、それからその逆にその家族をひどい目に遭わせた叔父さん伯母さんとかに対するものすごい憎しみね。このような情に燃えるお母さんだったみたいですね。で、ミラレーパってもともとまあ現代的な言い方すればマザコンです。かなりね(笑)。お母さん大好きで、お母さんには逆らえないっていう感じなんだね。
 で、ミラレーパのいろんなエピソードを見てると、ミラレーパ自体は小さいころからまああんまりこだわりのない、明るい子だったらしいんだけど、ミラレーパのお母さんがね、ものすごい執念深い人だったんで、あの叔父叔母にね、われわれをひどい目に遭わせた叔父叔母に復讐しないでわたしは生きていられないと。そしてミラレーパにその復讐のために魔術を習わせに行くんだね。
 この辺の発想がとても面白いけどね(笑)。この物語っていうのはね、分かると思うけど、まだそうですね、千年ぐらい前の話なんで、別におとぎ話とかじゃなくて、実際にあった話だと思うんです。つまり昔のインドとかチベットでは、普通に、なんていうかな、敵対する者を倒す方法として魔術とかが普通に使われていたんだね。つまり仏教が入る以前に、以前からチベットにはね、そういうちょっとシャーマニズム的なっていうか、土着のまあ魔術的要素も含んだ宗教というかな、そういうのがいっぱいあったわけですね。まあそれはどこでもありますけどね。チベットでもそういう魔術的なものがあって、で、仏教が入ってきてからも、その仏教とちょっと結びつくようなかたちで、魔術とかを普通にやってる人たちがいっぱいいたわけですね。
 で、実際に、例えば商売のね、戦いであるとか、あるいは王国同士の戦いであるとか、あるいは宗教間の宗教戦争とかで、普通に魔術が使われることがよくあったんだね(笑)。で、実際に魔術の力を持った人もたくさんいたんだと思います。
 で、ミラレーパもね、お母さんが魔術を習いに行かせたわけですね。で、ここでもそのお母さんはミラレーパに対してね、もしあなたが魔術の習得に失敗して、復讐が成し遂げられなかったならば、わたしは命を断つと。ね。そういうふうにミラレーパに言うんだね。で、ミラレーパはお母さん思いだから、別にミラレーパ自体はそんなに恨んでいたわけじゃないだろうけども、お母さんが死んだら困るっていうことで一生懸命、師匠のもとで魔術を習うんだね。
 で、おそらくね、まあこのエピソードもそうだし、ほかののちのエピソードもそうだけども、ミラレーパはここで天才的にその魔術をマスターするんだね。で、その魔術の先生の一番弟子ぐらいになっちゃうんです。これはね、ミラレーパの――ミラレーパはさっきから言ってるように非常にちょっと人間的なところがあるんだけど、ミラレーパの一番のやっぱり特徴は、集中力です。集中力。結局ね、こういうことを言うとなんだけども、魔術にしろ――魔術ってね、結局、集中力なんです。集中力。もちろんほかの要素もいっぱいあるけども、最も大事な要素は集中力です。あるいは現世的に皆さんが何か望みを叶えたいっていうときも、ポイントは集中力です。で、もちろん瞑想もポイントは集中力です。ただそこにね、煩悩が絡んだり、あるいは逆に聖なる教えが絡んだりすることによって、その集中力がいい方にいくか悪い方にいくかはまた別なわけだけど。で、結局、魔術の力も瞑想の力も集中力なんだね。だから、ミラレーパが短期間で魔術の師匠の一番弟子になるほど魔術をマスターしてしまったっていうのは、まあもともともちろんミラレーパは偉大な修行者の生まれ変わりだから、そういうね、ものすごい集中力っていうものを特徴として持っていたんだろうね。
 はい。で、その母の願いどおりに魔術を修得し、で、それによってその叔父叔母の子供や親戚、仲間たち三十五人を殺して、復讐を果たしたと。ね。そして、まあこれも母の願いだったんだけど、母の願いによって叔父叔母だけは生かしておけと。ね(笑)。つまり見せしめのためにですね。自分たちが味わった苦しみを生きて味あわせたいと。ね。だから叔父叔母は生かしておいて、その叔父さん叔母さんの愛するね、家族たちを殺せと。そういう指示を息子に出したわけですね。で、ミラレーパはそのとおりに魔術を習い、魔術の力でお母さんの恨みを晴らしたわけだね。
 はい。ここがミラレーパがまあ若いころ、カルマによってね、苦しみを味わい、それだけではなくて、まあそのカルマによってね、大いなる悪業を積んでしまったっていうところですね。
 はい。じゃあ次いきましょう。

share

  • Twitterにシェアする
  • Facebookにシェアする
  • Lineにシェアする