ハリダース・タクル(6)
◎マハープラブのマハープラカーシャとハリダース
シュリーヴァスの家で、マハープラカーシャ(大いなる天啓)が行なわれたとき、マハープラブ(チャイタニヤ)はご自分の信者たちをそれぞれ呼んで、至高者としてのお姿をお見せになりました。
そのときハリダースは、ベランダの外に立って泣いていました。
マハープラブは、彼を呼んでこう仰いました。
「ハリダース! こっちへ来て、わたしのダルシャンを受けなさい。」
ハリダースは、外からこう答えました。
「主よ! お許しください。
わたしはあなたのダルシャンを受けるに値しません。
あなたがわたしに慈悲をお示しになればなるほど、私は自分が卑しい者であるということに気づいてしまいます。
わたしには、あなたに合わせる顔がありません。」
マハープラブは再び言いました。
「お前の謙虚さには困ったな、ハリダースよ。
さあ、こっちへ来て、わたしのダルシャンを受けなさい。」
信者たちがハリダースをマハープラブの前に連れてきました。
マハープラブはこう言いました。
「ハリダースよ! 恩寵を求めなさい。」
ハリダースは言いました。
「主よ! あなたはバクタヴァッツァラ(信者に対してお優しい御方)ですが、わたしはバクタではありません。
あなたはディンダヤル(謙虚な者に対して慈悲深き御方)でありますが、わたしは謙虚ではありません。
それにもかかわらず、わたしに理由なき慈悲をお示しくださると仰いますならば、わたしが謙虚になることによってあなたにお仕えすることができるように、わたしに恩寵をお与えください。
わたしはあなたにお仕えする能力がございません。ですから、わたしがあなたのバクタたちの犬となり、彼らの番犬として彼らにお仕えし、彼らが食べた食物の残り物を食べることができるよう、わたしを祝福してください。」
マハープラブは言いました。
「ハリダースよ! 実を言うと、もうお前に恩寵として与えるものは残っていないのだ。
わたしはすでに、わたしが持っているものすべて――わたしそのものも含めて――お前に与えてしまった。
あのイスラム教徒たちがお前を鞭打ちにしたとき、わたしは彼らを殺そうと思った。
しかし、あのようなときでさえもお前が彼らの幸福を祈ったから、わたしはそうすることができなかったのだ。
それゆえに、わたしはお前をわたしの心の中にかくまい、鞭打ちをこの背中で受けたのだ。
これが、鞭打ちの際にお前が何の痛みも感じなかった理由である。
ほら、わたしの背中にまだ鞭打ちの跡が残っているだろう。」
こう言うと、ガウラ・バガヴァーン(チャイタニヤ)は、ハリダースに背を向けて、その鞭打ちの跡を見せたのでした。
それから彼はこう言いました。
「お前に恩寵を与えるのは無意味であるとわかったから、わたしは、お前の友、あるいは一日でもお前と一緒にいる者、あるいはお前を崇める者に、恩寵を与えよう。彼らは間違いなくわたしに達するであろう。」
ハリダースは、マハープラブが自分にこれほどまでの慈悲を示してくださったことを知って、バーヴァに入り、圧倒されました。
彼は自分を制御できなくなり、気絶して地面に倒れたのでした。
マハープラブが彼にシャクティを与えると、彼は立ち上がりました。
そしてハリダースは、合掌して、感情で喉を詰まらせながら、マハープラブの賛美を歌ったのでした。
それからしばらく後に、アヴァドゥータ・ニティヤーナンダがナヴァディープにやってきました。
マハープラブは、彼とハリダースに、ナヴァディープでハリの御名を布教するという重大な責任を委託したのでした。
彼らはナヴァディープの小道や横道に入っていき、ハリの御名という酒をたっぷり飲んで完全に酔っ払った人のように、ハリの御名を歌いました。
彼らが乞食僧であると知ると、人々は彼らに施し物をしたいと思いました。しかし彼らはこう言いました。
「われわれは食べ物などを求めてはおりません。
われわれは、ハリの御名という施し物が欲しいのです。
”クリシュナ”と言ってください。”クリシュナ”と唱えてください。
これがわれわれへの施し物(ビクシャ)です。
これがわれわれの教え(シクシャー)です。」
このようにして、歌い、踊りながら、二人はハリの御名を広め、ほとんどがシャークタ(シャクティ派)やスマルタ(正統派ブラーフマナ)であったナヴァディープの人々を、敬虔なるヴィシュヌ派へと変えていったのでした。
そしてジャガイやマダイといった罪人たちも、彼らによって聖者となったのでした。
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