マノモハン・ミトラの生涯(1)
マノモハン・ミトラの生涯
至福は存在の源であり、さらに、全ての人間努力の到達点です。その至福とは神そのものです。人間の存在は絶えず、為す全ての行為の中に至福を探し求めます。彼らは至福を求めて結婚し、至福を求めて子供をつくり、至福を求めて働いてお金を稼ぎ、至福を求めて食物を食べます。この世界において、全てはただ至福によって動機付けられているのです。
19世紀後半、シュリー・ラーマクリシュナはドッキネッショルに至福の市場をお開きになりました。そして、花の蜜を求める蜂の群れたちのように、あらゆる方角から、至福を得るために、師のもとに人々が集まってきました。
ある日、ある信者がシュリー・ラーマクリシュナにこう尋ねました。
「師よ、人々は離れた場所からあなたの元へとやってきて祝福を受けますが、なぜドッキネッショルの人々はやってこないのでしょうか。」
師はお答えになりました。
「ほら、火の灯ったオイルランプの下には暗い影がずっと残っているだろう。ガンジス川の岸辺にロープで結び付けられた雌牛を見てごらん。彼女は喉が渇いて死にそうだ。けれども彼女は結びつけられているがゆえに、すぐ近くのガンジス川の水を飲むことができないのだよ。その一方で、道に迷った雌牛たちは遠くからやってきて水を飲む。縛られた魂は神について耳にすることを好まないのだよ。マーヤーあるいは無智に覆われている限り、彼らは神をずっと忘れたままなのさ。」
シュリー・ラーマクリシュナの献身者であるマノモハン・ミトラはあるとき、夢の中でマーヤーが如何にして彼を害したのかを描写しました。
「それは1879年の秋、土曜日の夜でした。わたしは夢の中で、全世界が水に覆われているのを見ました。オクタロニー記念碑を含むカルカッタの全ての高層ビルは、すごい水流によって押し流されていました。どの方角をみても水しか見えず、人一人見当たりませんでした。わたしはどうすることもできずに、その流れに押し流されていました。突然、わたしの心にある想いが浮かびました。
『わたしの母はどこだろう? わたしの妻、娘、姉妹はどこだろう?』
するとすぐに、わたしはある声を聞きました。
『この世界には誰もいません。この世界はあなた自身です。全ての存在は死にました。』
『では、わたしは生きていて何になるのでしょうか?』
『自殺は重い罪です。』
『では、わたしは何処へ行けばよいのでしょうか。人が住めるところが見つかりません。』
『この世界には誰も生存していません。全ては死んでいます。』
『誰ひとり生きていないならば、わたしは誰と共に暮らせばよいのでしょうか。』
『神を実現したものだけが、この大洪水から生き残りました。あなたはすぐに彼らと出会い、彼らと共に生きてゆくでしょう。』
『わたしに見えるのは、至るところにある水だけです。わたしは何を食べればよいのでしょうか?』
『あなたの胸の下を探してごらんなさい。あなたは食物を得るでしょう。』
そして手を胸の下へと動かすと、板の欠片を発見し、わたしは浮力を得たのでした。
わたしは、神の遊戯を目の当たりにして驚きました。神を知らなくても、神はわたしの人生を救うために板の破片を届けてくださったのです。わたしは上手に泳ぐ方法を知らなかったので、その板なしに長い間浮いていることは不可能でした。
わたしは午前四時に目覚めましたが、しばらくの間、当惑したまま横になっていました。
それから妻を見て、わたしは叫びました。
『わたしはどこにいるのだ!? あなたは誰だ!』
それを聞いて、彼女は唖然としました。
通常の意識を取り戻すと、見ていたものが夢であったことをわたしは理解しました。」
その朝の後、マノモハンは従兄弟のラームチャンドラ・ダッタに会いに行き、その夢について話しました。
ラームは言いました。
「君が見たものは真実だ。本当のことを言うと、全ての存在はマーヤーの中に水没しているのだ。皆、生ける屍なのだよ。」
マノモハンはインディアン・ミラーやスラブ・サマチャルなどの新聞でシュリー・ラーマクリシュナの神聖な生涯について読んだことがあったので、ドッキネッショルにいる彼の元へ一緒に訪ねていくことをラームチャンドラに提案しました。ラームはすぐに同意しました。
この夢は、マノモハンをシュリー・ラーマクリシュナの元へもたらすこととなったのでした。