ラーマがいなければ
シーターは、このたびのハヌマーンの活躍をたたえて、ラーマの許しを得て、真珠の首飾りをハヌマーンに贈りました。
しかしハヌマーンはあまり喜ぶことなく、受け取った真珠の一粒一粒を、じっと見ていたかと思うと、その一粒一粒を割って、中を確認し始めました。
そこにいた人々は驚き、何をしているのかと尋ねると、ハヌマーンは答えました。
「この中にはラーマがおりません! どんな高価なものでも、ラーマがいなければ、私にとっては何の意味もないのです。」
人々が「そんなところにラーマが入っているわけがないではないか」と言うと、ハヌマーンは、「私の心の中にはいつもラーマがいます」と言って、自分の胸を開いて見せました。するとその中には、ほほえむラーマとシーターが、美しい姿でいたのでした。人々はハヌマーンの信愛の深さに感服しました。
ハヌマーンが真珠の首飾りを受け取らなかったので、ラーマは、代わりに何か欲しいものはないかとハヌマーンに尋ねました。するとハヌマーンはこう答えました。
「私は何も必要ではありません。ただ、あなた様に仕える場をお与えください。」
こうしてハヌマーンは、スグリーヴァや猿たちが故郷に帰った後も、アヨーディヤーに残って、ラーマに仕え続けたのでした。
(「要約・ラーマーヤナ」)