クリシュナ物語の要約(21)「ゴーピー・ギーター」
(21)ゴーピー・ギーター
ヤムナー河の浜辺まで戻ってくると、ゴーピーたちは、魂を魅了する主クリシュナのことだけを思いながら、クリシュナが帰ってくることを望み、全員でクリシュナを賛美する歌(ゴーピー・ギーター)を歌い始めました。
「ヴラジャは輝きました。あなたが降誕された故、
この地には、ラクシュミーが永遠に住まわれるのです。
愛する主よ、どうかご覧ください。
あなたの恋人たちが、あなただけに命をささげて、あちこちとあなたを探しています。
恩寵を授けるお方よ、秋の蓮華よりも美しいその目で、
無垢な私たちの心を射られたとは、ああ、喜びを授けるお方よ、
何とひどいことをされたのでしょう。
ああ、人の中の宝たるお方よ、
私たちはあなたに助けられて、毒の水や蛇の悪魔から、
雨や嵐、稲妻から、
子牛の悪魔やヴィヨーマから、
幾度も救われてきたのです。
あなたはゴーピーの息子ではなく、すべての心の目撃者なのです。
愛するわれらが友よ、あなたは宇宙を守るため、ブラフマー神に請われて、
ヤドゥ族に降誕されたのです。
ああ、愛しき主よ、
輪廻を恐れてその御足にすがる者を、あなたは守ってくださり、
その望みをかなえられるのです。
ヴリシュニ族の王よ、シュリーの手をとられたその御手を、
どうか私たちの頭にお置きください。
ヴラジャの苦しみを取り除く勇ましきわれらが主よ、やさしき微笑みで民のプライドをくじくお方よ、
しもべの私たちを、どうか受け入れてください。
愛しき主よ、蓮華のような御顔を、もう一度私たちにお見せください。
頭を垂れる者の苦しみを消し去り、草をはむ牛までが従う、美と繁栄の宿るその御足を、邪悪な蛇カーリヤの頭に置かれた、愛の苦しみを和らげる蓮華の御足を、どうか私たちの胸にお置きください。
雄々しきお方よ、魅力あるあなたのお話を、賢者にも喜ばしき、麗しきあなたのお言葉を、
あなたの定めに従う、あなたに心を魅了された私たちに、どうかお聞かせください。
ああ、蓮華の眼をされる主よ、
その唇より流れるアムリタで、私たちの命をよみがえらせてください。
苦しみをいやして、心を和ませ、
すべての罪を消し去る、賢者が賛美する、アムリタのごときあなたの物語を、
世の人々に語る者は、なんと寛大な方なのでしょう。
麗しきわが主よ、朗らかな笑みと、
思うだけで喜ばしい、愛に満ちた眼と、戯れと、ひそかな戯れ言、
それらはこの胸に深く刻まれ、ああ、人を欺く恋人よ、
私たちは心を乱されるのです。
愛おしきわれらが主よ、牛たちに草を食ますため、あなたがヴラジャから出かけられるとき、
森の小石や草の葉や切り株で、その柔らかき御足が傷つかぬか、
私たちはいつも不安になるのです。
日が沈んで一日が終わるや、牛たちのたてたチリで汚れた、巻き毛に覆われたあなたが、
水の中から花を咲かせる蓮華のように、その美しき姿をあらわされるや、
ああ、雄々しきお方よ、私たちは心を魅了されるのです。
ああ、魂を喜ばせるお方よ、あなたの御足は、ブラフマー神がたたえて、頭を垂れる者の望みをかなえ、
苦しみの時に思うべき、麗しき大地の飾りなのです。
苦しみを取り除くお方よ、蓮華のごときその御足を、どうか私たちの胸にお置きください。
われらが主よ、横笛にて楽しまれる、その唇のアムリタを、
喜びを高めて、悲しみを消し去り、すべての愛着を忘れさせる、あなたのアムリタを
どうか私たちにお授け下さい。
朝になり、あなたが森に出かけるや、あなたを見ることができなくなる私たちには、
ほんのひとときでさえ、まるで一生のように思えるのです。
夕暮れになり、森から戻るあなたの、黒き巻き毛に覆われた御顔を、瞬きもせずに見ようとする、私たちの眼をふさぐとは、ブラフマー神は何と心おろかなのでしょう。
ああ、アチュタよ。私たちは、あなたの調べにいざなわれて、
夫や子供、家族、兄弟を捨てて、そのなされようを知りながらも、こうして御前に参ったのです。
ああ、人をだます恋人よ、こんな真夜中に、女性を見捨てる男がいるでしょうか?
秘密に語られる恋のいざない、愛の火を掻き立てるやさしき笑みとまなざし、
シュリーが住む広き胸、それらで望みを抱かされた私たちは、幾度も心を惑わされるのです。
ああ、愛するお人よ、あなたが生まれたのは、ヴラジャと森の民の悲しみを終わらせ、宇宙に喜びをもたらすためなのです。
それゆえ、あこがれで心を満たされた、あなたを求める私たちに、
苦しみを癒すアムリタのごときあなたのお薬を、どうかおしみなくお授け下さい。
ああ、愛しき恋人よ。森を歩かれる柔らかきあなたの御足を、
私たちは躊躇しながらも、硬きこの胸に抱くのです。
あなたに魅了された私たちは、小石でその御足が傷つかぬかと、いつも心を乱されるのです。」
つづく