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「ヴィヴェーカーナンダ」(13)

 激しい炎が、ナレーンドラの心の中に燃え盛っていました。カーシープルに来た当事のナレーンドラは、ラーマクリシュナへの奉仕や修行の合間に、弁護士になるための勉強などもしていましたが、このころはもう、それらの教科書などには触れもしませんでした。そんなことで時間を浪費するのは恐ろしいことだと思っていたからです。

 あるとき、用事があって実家に立ち寄ったナレーンドラは、突然、自分は精神の向上がなされていないという内なる恐怖を感じ、外界のものは目もくれずに、無我夢中でカーシープルの師のもとへと急いで走っていきました。その途中、靴はどこかに脱ぎ捨てられ、稲の中を駆け抜けたので、服に多くの稲が突き刺さりました。無我夢中で師の部屋に飛び込んだ瞬間、ようやく彼は内なる安らぎを覚えたのでした。

 そのような異様な様子でナレーンドラが部屋に入ってきたとき、ラーマクリシュナはそこにいた他の弟子たちに言いました。
「ナレーンの精神状態を見なさい。以前、彼は人格神とか、神の姿を信じなかった。だがいまや、彼は神の姿を求めて夢中になっています。」

 ナレーンドラはまさに神を求める熱情の炎で焼き尽くされつつあったのです。かつてラーマクリシュナが修行に明け暮れた樹の下で、彼は毎晩、瞑想に明け暮れました。
 あるとき、法友のギリシュとともに樹の下で瞑想をしていると、無数の蚊が二人に群がってきました。ギリシュは精神を集中しようとしましたが、無駄でした。しかし目を開けてナレーンドラを見ると、彼の体は一面蚊に覆われているに関わらず、まるで何もないかのように、静かに瞑想に没頭しているのでした。
 
 ある日、ナレーンドラの神への熱望は極限状態に達したように思われました。その夜、彼は一晩中、師からもらったマントラでもあるラーマの名を、胸の張り裂けんばかりに唱え続けました。早朝、その声を耳にしたラーマクリシュナは、ナレーンドラをそばに呼び、こう言いました。
「まあ、お聞きなさい。お前はどうしてそんなことをするのですか。せっかちなやり方では、何が達成できますか。」
 そしてしばらく沈黙した後に、ラーマクリシュナは続けてこう言いました。
「なあ、ナレーン。今お前がやっていることを、私は十二年もの間してきました。その間中、嵐が頭の中で荒れ狂っていました。一夜でお前に何がわかるものですか。」

 
 ナレーンドラは自分の修行だけではなく、他の兄弟弟子たちの指導にも、熱心に励みました。師の看護と自分の瞑想の合間のわずかな時間を、他の弟子たちとともに、様々な教えの勉強や議論に費やしました。シャンカラ、チャイタニヤ、クリシュナなどの教えばかりか、ブッダやキリストの教えも深く吟味しました。
 ナレーンドラは特に、ブッダに対して強い敬愛の念を抱いていました。ある日突然、ブッダの悟りの地であるブッダガヤーを訪ねたいという強い想いが生じ、カーリーとターラクという二人の兄弟弟子を連れて、ブッダガヤーへ趣き、ブッダが悟りを得た菩提樹の下で、長時間にわたって瞑想しました。
 このときナレーンドラは、そこに実際にブッダが存在しているという実感を痛切に感じ、そしてブッダの崇高な教えでインドの歴史がいかに変えられたかを、ありありと知りました。そして自分の感情を抑えきれなくなり、彼はターラクを抱きしめて、声を上げて泣き出したのでした。

  

つづく

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