解説「菩薩の生き方」第十七回(5)

いかなる生にあっても、その生に随順する五神通が得られますように。
あらゆる衆生に、すべてにおいて常に利益と安楽を与える者となりますように。
はい、五神通っていうのは、この間、合宿のときにちょっと出ましたが、つまり六神通っていうのがあって、その六神通の最後の一つは漏尽通といって、これは悟りそのものなんですね。悟りそのものを漏尽通といって。よって、実際には神通力、つまり仏教的超能力的なものは五つあるわけだけど。これがまあ簡単に言うと、いろいろテレポーテーションしたり空を飛んだりする神足と、それから高い世界の神と会話する天耳、そして深い意味で人の心のデータを読み取る他心通と。そして過去世を知る宿明通と、そしてまあ、人の死後を知る死生智っていうのがあるわけだけど。ただ実際にはここで書かれてるように、「その生に随順する五神通」って書かれてあるよね。で、あるいはさ、例えば今言ったのは仏教の話だけど、ヨーガにおいては、よくラーマクリシュナの話にも出るけど、八つの神通力とかいうのがよく出てきますね。ヨーガには八つの神通力がありますよと。巨大化したりとか(笑)、小っちゃくなったりとか、いろいろあるんだけど。つまりそれはさ、実際にはその項目は流動的っていうか、あんまり意味がないって考えた方がいいのかもしれない。つまりこれは時代というよりも、その人の使命によって変わってくる。
つまり、もう一回言うとね、中心にくるのは当然悟りそのものです。悟りそのものがあって。で、救済をする場合、いろんなかたちでプラスアルファの力を持たなきゃいけないと。で、それは当然、時代というよりは個々の使命によって変わってくるでしょうね。つまりその人の生っていうか。今生はどういうことをやらなきゃいけないのか。だから神通力って別にそこまでのすごい、なんていうかな、超越的なものとは限らないよ。例えばヴィヴェーカーナンダが百科事典でも一回読んだだけで全部覚えたっていうけども、あれは神通力ですよね(笑)。つまり驚異的記憶力っていう神通力を一つ得ていたと。あるいはヴィヴェーカーナンダでいうと、これも何度も言うけどさ、ヴィヴェーカーナンダの教えっていうのは、そうだな、ちょっと好き嫌いが分かれるところがある。例えばすごくピンとくる、感動するっていう人もいれば、もちろん言ってることは分かるけど別にそこまででもないっていう場合もあると。でも彼のスピーチは聴衆をもうほんとに震え上がらせてたと。大感動させたと。で、あの初対面のアメリカの宗教会議に来た聴衆がスタンディングオベーションと。今まで誰にもやらなかったのに、ヴィヴェーカーナンダだけに大喝采、数分間鳴り止まぬ拍手とスタンデェングオーベーションと。これはもう彼の言葉の力だね。人を感化させ、人の魂に直接、真理の衝撃を与える神通力ですね。
だからこういうかたちで、その生その生における、それは超越的なものかもしれないし、あるいは超越的でない、あまり目立たないものかもしれないけど、いろんな力が必要であって。
だから、この間も何かの質問で出たけど、ある人は例えば動物と話す力が必要な人もいるかもしれないよ(笑)。動物と話すことが救済の条件っていう人は、動物と話す力を身につけるでしょう。でもそれがいらない人には別にいらないよね。だからこの辺は、あまり突っ込んで考える必要ないんですけどね。まあ、ちょっとこう、なんとなく楽しみにしてたらいい。自分は将来どんな力が身につくんだろうと。自分の使命に応じた力が身につくだろうと。
はい。これもまた発願としてですね。つまり、しっかりと修行して、自分の使命を達成できるようなさまざまな力が身につきますようにと。
あらゆる衆生に、すべてにおいて常に利益と安楽を与える者となりますように。
すべての世界において、もしある人々が罪悪をなそうとするならば、彼らをすべて害することなく、常に速やかに罪悪への欲望から離れさせますように。
悪いことをしようとしてる人がいると。当然、それを殴って止めさせたりとか、いろんな強引な方法で止めさせることができるけど、でもできるならば相手に害を与えずに、そのような悪への欲望から離れさせたいと。でも、これもだからもちろん理想というか、このナーガールジュナの優しい愛からくる願いですよね。実際にはそううまくいかないかもしれない。実際には殴ってでも相手を改心させなきゃいけないこともあるかもしれない。でもできるならばそのような危害を加えずに、みんなを悪から離れさせたいということですね。
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