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解説「菩薩の生き方」第十四回(4)

 はい。もちろんこの別パターン、これはまさに、そうだな――これもいつも言ってる、ギリシュ・チャンドラ・ゴーシュの、「代理人」の話ですね。これはちょっと別パターンですけど。つまりこの場合は、ギリシュは師ラーマクリシュナに、自分の代理人の権限を与えたと。代理人の権限を与えたっていうのは、まあ最初の動機はあんまり良くなかったんだけど(笑)。動機は、ギリシュが規則的な修行ができないと。これが動機だったんだけど。だから師ラーマクリシュナにすべて自分の、言ってみれば存在、カルマ、修行のすべての権限を明け渡すと。この意味わかりますよね? つまりどういうことかっていうと、自分でやるって考えたときは――まあ例えばですけども。実際には自分でできることっていうのはないんだけど、一応例としてね、言うならば、自分でやる場合は、「はい、わたしにはこれだけのカルマがあります」と。「悪いカルマがあります」と。「よし、じゃあ今日はこの悪いカルマを取り除くために、ちょっと地獄のカルマを落とすために、ちょっと長く蓮華座組んでみようかな」とかね。あるいは、そうだな、ちょっと口のカルマ落とすために、口悪い人のところに行って、わざとばかにされようかな、とかね。こういうやり方があるかもしれない。これは自力の場合ね。でもそうじゃなくて、どのようにわたしが修行を進め、どのように神の意にかなうように変わっていくかの全コントロール権、今どのようにしてどのように修行を進めていくかの全コントロール権を師に捧げましたと。つまりわたしはもう完全に、ここにおいて――つまり菩提心とはまた別のパターンで――わたしの権限はここに何もありませんと。このわたしの体、心、人生、どうなるか、どうするか、全権限は師に与えましたと。これがギリシュのパターンね。これがバクティにおける完全な明け渡し。
 ギリシュの場合、ラーマクリシュナにそう言われて、最初、「ああ、楽だ!」と思って。「おれ、何もしなくていいのか、楽だ」と思って明け渡しちゃったんだけど(笑)、そのあとそれがいかに――だから最初はギリシュは、朝起きてマントラ唱えるとか、昼にね、この礼拝をするとか、「そういうのに縛られるのは嫌だ!」と思って明け渡したんだけど、とんでもない、より強固な鎖に縛られたことに気付いたと(笑)。もう離せない。もう完全に自分の呼吸さえも自分の自由ではない状況に陥ったことがわかったと。
 でもギリシュは、逆に言うと、それに途中で気付き、明け渡せるようになったのが非常に素晴らしいわけだね。つまりギリシュにとっては、何が起ころうが――実際にギリシュは最初、放蕩者っていうか、大変な遊び人で、酒や、あるいは売春宿に通ったり、あるいはさまざまな、まあ、ギャンブルその他に耽溺してたような人だったんだけど、ラーマクリシュナに出会ってだんだんそういうのがなくなっていって、だんだん聖なる神の素晴らしい信仰者になっていったわけだけど。で、ラーマクリシュナが亡くなったあとくらいから、今度はギリシュの苦悩の日々が始まるんだね。愛する子供が死に、仕事もうまくいかなくなり、もうボロボロの状態になるわけだけど、でももうかなりギリシュはバクティが進んでたから、その状態で一切それに文句を言わないと。なぜならば、「わたしはもう、わたしの人生の、修行の権限を師に明け渡してしまった」と。「そしてその思いがあまりにも強いがゆえに、何があっても、師が最善の方法で、つまり一番わたしが早く幸せになり、一番早く完成するための方法として、すべてを起こしてくださってると、この思いがあまりにも強いから、だから何があってもわたしは文句を言えない」と。妻が死んでも、子供が死んでも、仕事が全然駄目になっても、なんの文句も言えないと。その発想ね。これは菩提心とちょっと方向性は違うけども、同じ理念があるんだね。
 まあ、皆さんの場合、その両方を学んでるから、その両方を持ったらいいと思う。つまり神やグルに対して、わたしはすべて明け渡しましたと。で、同時に、衆生にも明け渡しましたと。だからこの身は、あるいはこのわたしの存在は、神のものであり、グルのものであり、そして衆生のものですと。お好きに使ってくださいと。わたしがそこに何か意見を入れる余地は全くありませんと。この発想ね。
 で、繰り返すけど、それを百パーセントできる人はまだいないと思う。いないと思うけども、理念を忘れるなと。考え方ね。そうすれば対抗できます。エゴが騒ぎそうになっても、「おれの生き方はこうなんだ」――この理念さえ忘れなければ、なんとか闘える。闘って、自分のカルマを超えていけるんだね。
 はい。だからこれも非常に現実的な話なんだね。こういうのを日々繰り返す――ただ、もちろんただバーッて読むのも大事、いいことですけども、ただ読むだけではなくて、しっかりと当てはめて、自分に当てはめて、こういうことを読み、そして、何度も何度も決意をし直すと。あるいは理念をしっかりと自分の心に言い聞かせ直すということですね。

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