解説「菩薩の生き方」第二十一回(2)

三-二.心の仕組みへの正観
これは二の四念処の「心念処」とも関わってきますが、三-一とは違い、それが真理であるかどうかなどとは関係なく、ただ日々の心の動きを観察していきます。それによって心の仕組みの理解を深めていきます。
ここでいう心の働きの観察というのは、「ああ、今こういうことを考えている」とかいうことではありません。どのようにイメージが生まれ、どのように感情が生まれ、どのようにそれが収束し・・・といったことをつぶさに観察し続けるのです。
はい、これは読んだとおりですけどね。ただまあ実際には一番目の方が大事なので、この二番目っていうのは、そうですね、余裕がある、つまりもうある程度自分の心が安定していて、っていうときにやるものですね。つまり安定してるから――もちろん安定してても気を抜いちゃいけないけど、安定して、もう別にあまり悪い心が出てこないと。あるいは素晴らしい真理の法で心がいっぱいであると。で、これは、ここに書いてあるように、「さあ、今悪い心が出てきただろうか?」とかそういうものではなくて、そもそものシステム。心ってどうなってるのかと。われわれはいろんなことを考えたりとか、あるいは感情がワーッて湧き起こってきたりとか、あるいは記憶によって、いろんな思いが錯綜したりとか、このシステムいったいなんなの? と。ね(笑)。どうなの? っていうことを――まあ、こういうことを例えば西洋では心理学で、あるいは東洋でも、例えば仏教の、仏教的心理学、あるいはヒンドゥー教的心理学でああだこうだ言ったりするわけだけど、でもそれは学問として学ぶものじゃなくて、自分で見るものなんだね。自分で自分の心を観察すると。
でもこれは前提として、さっき言ったような心の訓練だけではなくて、いわゆる寂止といわれる心の寂静の安定ができてないとなかなか難しいと。最初はあまりにもぐじゃぐじゃし過ぎてて、観察どころじゃないと。わけがわからないと。でもだんだん静まってくると、その仕組みを観察できると。
何回かわたし言ってるけど、わたしがよくそういうのを最初のころ――これ、何かにも書いたけどね――やってたときは、あるとき例えば、町を歩いていて、お店とかで流れていたその当時の流行りの曲がね、頭の中でちょっと鳴り響いちゃって。別にその曲が好きだとかじゃないし全然知らないんですけども、そのデータがずーっと鳴り響いちゃってると。で、それを瞑想で「これは消す! 消えろ!」とかじゃなく、あるいは逆に聖なるものを思い浮かべるとかでもなくて、その音自体に集中するわけだね、例えばね。鳴り響いてる――だって聞こえてないんですよ。頭で鳴り響いてるんですよ。いったいこれはなんなんだと。集中すると。グーッて集中すると、それがまあ、比喩的に言うと、ちょっと逃げだすんですね、その音が(笑)。うん。ワーッて困ってるときはもうバーッてやって来る感じなんだけど、「おまえなんなんだ?」ってこう(笑)、集中すると、それが逃げていくんです。つまり大もとに帰っていくんです。「どこに行くんだ?」――グーッ――これはだから言葉では言えないんだけど、心の奥の方に帰っていくと。ああ、こういうことかと。これはここから来てたのね、と。じゃあこれはどこから来てるんだ? と。ね(笑)。その奥はどういう仕組みになってるんですかって感じでグーッて入っていくんだね。
まあ、だからこれはイメージで言うと、心の奥から怪物がやって来て、怪物に「わー! やめてくれー!」じゃなくて、「待て!」って捕まえに行って(笑)、捕まえたら、怪物が心の中に逃げていくじゃないですか。「あ、逃げてった!」――一緒に入っていって、「おお、こうなってるのか」っていう感じで(笑)、心の奥底に入っていくような瞑想だね。
まあ、これは一つの一例ですけどね。心が静まってくることによって――静まったといっても完全に静まってるわけじゃない。静まってるといっても、今言ったような、システム的なかたちで、何かの拍子にいろんな思いが湧き上がったり、あるいは感情が出てきたりするわけだけど、でもベーシックには静まってるから、それが非常にわかりやすくなってるんだね。で、それを観察することで、つまり学問的な心理学ではなくて、経験的に、「ああ、なるほど、こういうことですね」と、心の仕組みがわかってくると。それはもう、なんていうかな、自分で経験するものだから、誰にも覆せない事実っていうかな、真実として、心の仕組みがわかると。
で、この心の仕組みっていうのはもちろん、浅い経験じゃ駄目ですけども、深い経験を何度もしてると、それは共通のものだから、だから他人の心の仕組みも同じであるっていうのがわかる。だから例えば、皆さんが将来、救済者として多くの人を救わなきゃいけないっていうときにもそれは役に立つし、あるいは自分がいろんなかたちでまた誤った道に入りそうになったとか、いろんな心の問題が出てきたときにも、その心の仕組みを利用して、うまく対処することができると。
はい、これは、繰り返すけど、一番目が、そもそも今の現状の悪い状況を回復するっていうもので、で、二番目が、ここで言ってるのは、そうじゃなくてそのシステム自体、心のシステム自体をしっかり観察して理解するという瞑想ね。
はい。しかしこの二番目に関しては、まずはベーシックに相当まず静まってからでないとなかなか難しいと。だからそれは考えなくても、実際にはそういう時期がおそらくやって来たら、自然にやって来ます。自然にやって来るっていうと変ですけど、皆さんの心がもっともっと静まったら、わたしの経験みたいに、あるとき、静まった心の中でいろんな心の動きが見えてくることによって、あるいはそれに集中することによって、グーッと深く入る経験とかね、できるようになるかもしれない。だからまずは徹底的に、心の整理っていうかね、心の悪しき習性を整理していくと。浄化していくと。これがまず大事だね。
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