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要約・ラーマクリシュナの生涯(3)「チャンドラデーヴィーの不思議な体験」

3 チャンドラデーヴィーの不思議な体験

 家に帰ったクディラムは、ガヤーで見た不思議な夢のことは誰にも語らず、成り行きを見守った。彼が最初に気づいたのは、チャンドラデーヴィーに起こった驚くべき変化だった。彼の目には、彼女は以前の彼女ではなく、まるで女神のように見えた。ある、知られざる源泉からわき出る、すべてを抱擁する愛が、彼女の心を満たし、彼女をあらゆる世俗の欲望を超えた高貴な段階に引き上げていた。
 今や彼女は、自分のことよりも常に近隣の人々のことを心配し、自宅の家事の最中にもしばしば彼らの世話をしに行った。自宅の倉庫から食物や日用品を持ち出しては、貧しい人々に与えた。
 毎日、まずラグヴィールの礼拝をおこない、その後に夫と子供たちに食事を出し、そして夜遅いにもかかわらず、自分が食事をする前に、近所の人々がちゃんと食事をしたかどうか見に行くのだった。もし何かの理由で食べられないでいる人がいれば、無理矢理自分の家に連れてきて、自分の分の食事を与えた。
 さらにクディラムは、彼女が、隣人たちに対してだけではなく、神々に対してさえも、母としての愛を感じているのを知った。彼女は家の神ラグヴィールを自分の息子と見なし、女神シータラーやラーメーシュワル神も自分の子供たちと見なした。以前はこれらの神を礼拝するときは彼女の心は常に畏敬の念に満たされていたのだが、今では愛の感情が強く彼女の心を満たすのだった。神々に近づくことへの恐怖やためらいはその心から消え、彼女にとってはもはや彼らに隠すことも願うこともなかった。その代わり、神々は自分の子供たちよりももっと身近にいらっしゃるという確信と、彼らを幸せにするために自分のすべてを捧げたいという強い願望と、そして永遠の関係の中で彼らと結ばれているという忘我の喜びとがやってきた。

 クディラムは、神々への気遣いの必要のない信仰と、彼らとの密接な関係から生まれる喜びによって、無邪気なチャンドラデーヴィーが前よりももっと人を信じやすくなっていることに気づいた。彼女はもはや誰をも疑うことはできず、人々を他人として見ることもできなかった。

 クディラムはこのような彼女の状態を見て、「世間は利己的であるが故に、彼女のこのような無邪気さを決して正しく評価しないだろう。それどころか、バカかキチガイのように思われてしまうだろう」と思い、折りを見て彼女に忠告をしようと考えた。
 
 純真なチャンドラデーヴィーは、たった一つの思いでさえ、夫のクディラムに話さずにいることはできなかった。クディラムがガヤーから帰ってきてからは、あらゆる機会に、クディラムの留守中に自分が見たり経験したことをクディラムに話した。ある日彼女はこう言った。

「留守中のあるとき、私がジュギの家の礼拝堂の前でドニと話をしていますと、大神シヴァの聖像から突然神々しい光が出て礼拝堂を満たし、波となって私に向かって押し寄せてきました。そしてその光は私を包み、私の体の中に入りました。驚きと恐ろしさに打たれ、私は気を失って倒れました。ドニが介抱してくれましたが、ドニは、『てんかんの発作が起こったのでしょう』と言いました。でも私は、それ以来ずっとその光が胎内に宿っていて、自分が妊娠しているような気がします。このことはドニとプラサンナにも話しましたが、彼らは私をしかり、バカだとかキチガイだとか、いろんなことを言いました。彼らによりますと、この経験は、妄想か、または身体の故障が原因で起こったのだそうです。そして彼らはそのことを私に納得させようと様々なことを言い、そしてこのことは他の誰にも話してはいけないと言いました。そこで私も、あなた以外の誰にも話すまいと決めて、今まで黙っていたのです。
 あなたはどうお思いですか? あれは神の恩寵だったのでしょうか。それとも、ただの病気だったのでしょうか。今でも私は自分が妊娠しているように感じるのです。」

 チャンドラデーヴィーの話を聞いたクディラムは、自分がガヤーで見た夢を思い出した。そして彼女にこう言った。

「今後はそのようなヴィジョンや経験のことを、私以外の誰にも話してはいけないよ。何の心配もせずに、ラグヴィールがお慈悲を持ってお示しくださることはすべて私たちの幸せのためなのだ、ということを肝に銘じておきなさい。ガヤーに滞在中、ガダーダルが不思議な方法で、私に息子が生まれるだろうということをお告げになったのだ。」

 クディラムの言葉を聞いて、チャンドラデーヴィーは安心した。そしてこの時以降、チャンドラデーヴィーは、クディラムにしたがって、ラグヴィールに完全に帰依した。

 この会話から三、四ヶ月が過ぎた頃、チャンドラデーヴィーが妊娠したということが、誰の目にも明らかになってきた。彼女のお腹は大きくなり、しかも非常に美しくなった。

 この後、チャンドラデーヴィーは、以前よりも頻繁に、神秘的なヴィジョンや経験をするようになった。ほとんど毎日のように、神々や女神たちの姿を見ていた。神々が発する芳香をかいだり、神々しい声を聞いたりもした。

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