要約「シクシャー・サムッチャヤ」(20)「正しい心の建立」
◎正しい心の建立
このような心の修習を成就することにより、戒とサマーディは互いに互いを増大させる。こうして菩薩は衆生を利していく。すべては心の成就を根本とする。ゆえに、宝雲経にはこう説かれている。
「一切法を知るのは皆、心による。
心を先導として、あまねくもろもろの法がやってくる。
また、心によって行為は清浄となり、行為が清浄となれば心は不動になる。
よって、心をあまねくよく観察し、正念に住するべし。
そうすれば心は自在となり、心が自在となれば、一切の法においても自在を得る。」
またガンダヴューハ・スートラ(華厳経)にはこう説かれている。
「心こそが一切の菩薩行を建立する。
心が正しく建立されることによって、一切の衆生を救済する。
心が一切の善根を具足する。
心が法雲地を具足する。
心によって、堅固にして障害なき者となる。」
「善男子、一切の生死輪廻の境界から解脱したいなら、心の城を守護すべし。
如来の十の力を得たいなら、心の城を荘厳すべし。
物惜しみや嫉妬などを断じたいなら、心の城を浄化すべし。
大精進を増大し、全智を求めるなら、心の城を増大すべし。
魔の輪を打ち砕き、一切の煩悩の魔、および悪友の影響を超えたいなら、心の城を防護すべし。
すべての世界に大いなる慈愛をあまねく及ぼしたいなら、心の城を広大にすべし。
広大なる真理の法をもってもろもろの不善の法を対治したいなら、心の城で覆うべし。
もろもろの不善の法を排除したいなら、心の城を厳粛にすべし。
菩薩は、このような心の城の清浄なる修習によって、よく一切の善根を積集し、もろもろの障害はなく、真理の現前は不動となり、ブッダとの縁、法との縁等は不動となる。」
故に、菩薩道に住する者は、心において不動を得、寂静より心動かさず、外的行動の中でも心統一せよ。
正念正智を得るならば、彼は自在となるが故に、外的条件の影響を受けない。
「一切に心を不動にして、慈愛の言葉をもって、縁ある衆生を守護する。
こうして彼は、すべての衆生に受け入れられる。」
衆生を見捨てずに守護することは、菩薩の道である。法集経には、こう説かれている。
「菩薩は、衆生の幸福を喜ぶ。菩薩はただ衆生を救済するための行為を行ない、それ以外の行為を行なわないが故に。これを菩薩の法の集まりという。」