要約「シクシャー・サムッチャヤ」(1)「布施のパーラミター」
要約「シクシャー・サムッチャヤ」
このシリーズは、シャーンティデーヴァの「シクシャー・サムッチャヤ」を、私が独断と偏見で要約しまとめたものです。
第一章 布施のパーラミター
すべてのブッダと菩薩に帰依したてまつります。
地獄は大恐怖にして猛苦極まりない。
かつて寂静の心がなかったが故に、幾度も地獄に落ちてきた。
ゆえに教えを学ぶことを決意し、偉大なるダルマに親しむ。
ダルマを学ぶことによって、もろもろの罪悪を遠離し、かつて作った罪悪を懺悔する。
これによって未だかつて得ることのなかった喜びを得、その菩薩の素晴らしい至福はどんどん増大して減少することなく、最終的にブッダの最高の至福を得るべし。
真理との出会いは稀有である。願わくばほんの少しの間、我が説くところを聞け。
ただ三界の主なる人の言葉を聞くために、ここへ来たれ。
神々もナーガも喜び、ガンダルヴァ、ヤークシャ、ガルダ、阿修羅、キンナラの主も、大聖仙も、真理を聞く渇望を生ぜしめて、ここへ来るべし。
如来とダルマとブッダの御子(菩薩)とに、われは今、ブッダの言葉を集め理解せんがために、決意し、誠実に恭敬す。
われは過去において少しの真理の理解もなく、教えもなく、教えの言葉も知らず、善の実践もせず、また幸福を得ず、ただ自我のみを友としてきた。
しかしわれは、もろもろの善根を成就せんがために、清浄なるダルマを得ることを決意した。
そして今、かつてのわれらのごとき者たちのあり様を見て、教えをまだ学んでいない者たちのために、われはこの教えを説こう。
この世に生まれた意味を知りたいと欲する者は、それは短い時間で具足することは難しいと知れ。もしそれを速やかに成就したいと思う者は、この教えの集成を聞くべし。
ガンダヴューハ・スートラ(華厳経)において、スダーナは、勝熱ブラーフマナのところにおいて、こう語っている。
「人間の身体を得るのは難しい。
真理と出会うことを阻害するもろもろの難から脱するのは難しい。
一瞬でも清浄を具足するのは難しい。
ブッダが世に出た時代に生まれるのは難しい。
感覚器官を障害なく持つことは難しい。
ブッダの教えを聞く機会を持つことは難しい。
素晴らしき友に会うことは難しい。
真実の師に会うことは難しい。
理の如くに正しいダルマを受けることは難しい。
真理に励む人生を得ることは難しい。」
しかし我々は今、これらの得がたき境遇を目の前にしている。
そして、もしここに偉大なる魂がいたならば、このように観察するだろう。
「私も他人もともに、恐怖と苦しみとを喜ばない。
ならばなぜ、私だけを恐怖と苦しみから守り、他人のことは守らないでよいといえようか。
自分のためだけになす真理の実践に、何の価値があろうか。」