行け!
ヨーガ教室で、トンレンの瞑想をやらせていたときのこと。
トンレンというのはここに何度も書いているが、他者の苦しみを吸い込み、自分の幸福を差し出すという、慈悲と菩提心に満ちた瞑想だ。
この瞑想は、私の経験では、非常に強力な瞑想だ。強力にエゴを破壊し、幸福感をもたらし、心を安定させる。
しかしこれをやるには最初、勇気が必要だ。自分が幸福になる最短の道の一つがこのトンレンなのだが、それを知らない自我意識は、最初、嫌がるのだ。
しかしがんばってほしい。がんばってこの慈悲と菩提心の世界に足を踏み入れてほしい、と思いつつ、みんなの瞑想を見つめていた。
すると--実は瞑想中、無造作にランダムにいろいろな音楽をBGMとして流していたのだが、般若心経のマントラを歌にした音楽が流れ始めた。
「--ガテー ガテー パーラガテー パーラサンガテー ボーディ スワハー・・・」
このマントラだけがメロディに合わせて繰り返し、流れ続ける。
そのとき、私の心に静かな感動が起こった。このマントラが、みなのトンレン、菩提心の道へ足を踏み入れることを励ましているように思えたのだ。
般若心経は空の智慧について説いた経典で、慈悲とか菩提心とはあまり関係がないと、普通は解釈されている。このマントラにしてもしかりなのだが、私はこのときはそうは感じなかった。
一般の解釈とも、サンスクリットの直訳とも少しずれるが、私が心で感じたこのマントラの意味は、こういうものだった。
「--行け! 行け! エゴを超えて行け! 完全にエゴを超えて行け! 菩提心に目覚めよ! 菩提心に自らを捧げよ!・・・」
良き縁があり、真理の真髄である菩提心、トンレンに巡り合った幸福な者たち。
しかしまだエゴにより、トンレンに躊躇する心もある者たち。
彼らに対して、「躊躇するな、勇気を持って突き進め、行け! 菩提心の世界に突き進め!」・・・と、このマントラが励ましているかのように聞こえたのだ。
「--行け! 行け! エゴを超えて行け! 完全にエゴを超えて行け! 菩提心に目覚めよ! 菩提心に自らを捧げよ!・・・」
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