虚空に等し
この全世界は、生起することもなく、消滅することもない。
もろもろの輪廻世界は夢のようなもので、芭蕉のように核心がない。ニルヴァーナに入った者と入っていない者も、真実においては相違はない。
かように諸法が空であれば、何が得られ、何が奪われることになろうか。
誰が誰に対して尊敬したり、あるいは軽蔑せられるであろうか。
楽や苦しみがどこにあろうか。何が好きで、何が嫌いか。何が渇愛であるか。その本質を探求するとき、どこに渇愛があるか。
この生命世界を考察するなら、誰が実にそこで死ぬであろうか。輪廻の中で、誰が敵になり、誰が親族であり、誰が友人であろうか。一切を虚空に等しと理解せよ。
――入菩提行論