聖者の生涯『アドブターナンダ』(1)
ラーマクリシュナ・パラマハンサは、カルカッタの北にあるドッキネッショルという田舎町のカーリー寺院に住んでいました。その熱情と霊的修行が最高潮に達したとき、ついに彼は明智を得たのでした。
完全な悟りの境地に達したラーマクリシュナは、約束された弟子や信者たちを待ち望むようになりました。彼はよく、寺院のテラスに立って、
『お前たちはどこにいるのだ? 早く来ておくれ! でないとこの肉体はいつまで持つかわからない。』
と大声で叫んでいたといいます。
そして実際に多くの弟子や信者たちが集まり始めました。その最初に集まり始めた弟子の中に、ラームチャンドラ・ダッタがいました。
ラームチャンドラには、ラトゥという名の召使の少年がいました。あるときラトゥは、ラームチャンドラが、ラーマクリシュナの教えのいくつかを他の人に説いてあげているのを耳にしました。
『神は人の心の中をご覧になる。その人が何者か、どこにいるのかは気にしない。神を慕う人、神以外の何ものも求めない人、そのような人に神は自らを現わされる。純真で清らかな心を持って神を求めなければならない。心から神を慕わなければ、神を見ることはできない。人は一人で神に祈り、神を思って泣かなければならない。そうして初めて、神は恵みを与えてくださる。』
これらの言葉を聞いて、ラトゥは強い感銘を受けました。時々、ラトゥが毛布に包まって横たわりながら、そっと涙をぬぐっているのが見られました。しかし彼は自分がなぜ泣いているのかを、誰にも打ち明けませんでした。
ある日曜日、ラームチャンドラがラーマクリシュナのもとへ行くとき、ラトゥもついていきました。こうして初めてラトゥはラーマクリシュナに会ったのです。
ラーマクリシュナはラトゥを見ると、ラームチャンドラに言いました。
『ラーム、お前がこの子を連れて来たのかい? どこで彼を知ったのかね? 彼には尊い印がある。』
その後、ラーマクリシュナに深く帰依するようになったラトゥは、ラームチャンドラの家で召使として働くことに困難を感じるようになってきました。ラーマクリシュナはラトゥに言いました。
『この場所に来たために自分の仕事を怠るようになってはいけないよ。ラームはお前に住まいや、食べ物、服、お前の必要なものを何でもくれる。ラームの家の務めを怠るのは良くない。恩知らずにならないように気をつけなさい。』
お叱りを受けて、ラトゥの目に涙がにじみました。ラトゥは言いました。
『私はこれ以上仕事に就きたくないのです。私はここにとどまってあなたにお仕えすることだけを望んでいます。』
『しかしお前がここにとどまったら、誰がラームの家族のために働くのか? ラームの家族は私の家族でもあるのだよ。』
ラトゥはとうとう泣き出して、言いました。
『私はあそこにはもう帰りません。ここにいたいのです。』
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