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サーラダー・デーヴィー(2)

 1872年6月5日、ラーマクリシュナは36歳、サーラダーは18歳になっていたころのことでした。ラーマクリシュナが住んでいたカーリー寺院では、ショーダシー・プージャーという祭典が行なわれていました。
 その日、ラーマクリシュナは、一般向けの祭典とは別に、自分の部屋で、秘密の儀式を行なう準備をしていました。夜九時から行なわれたその儀式には、ラーマクリシュナの指示により、サーラダーが呼ばれていました。
 ラーマクリシュナはサーラダーに、神のために設けられた座に座るように指示しました。すでに半意識的な神的ムードに入っていたサーラダーは、ラーマクリシュナの言葉のままに神の座に座りました。
 ラーマクリシュナは祈りを唱えて女神を呼び出されました。
『おお、聖なる母よ。おお、永遠の乙女、あらゆる力をつかさどられるお方! 完成に至る扉を開きたまえ。この乙女の心身を清め、衆生の救済のために彼女自身のうちにご自身を現したまえ。』

 この儀式の間、サーラダーは、半意識のまま、動くこともしゃべることもできませんでした。そしてついにラーマクリシュナとサーラダーは完全にこの世の意識を失い、超越的な次元で一体となりました。

 こうして儀式は終わり、片田舎の素朴な少女だったサーラダーは、聖なる女神の化身としての意識と地位を与えられたのでした。

 この特別な儀式の後、六ヶ月間、ラーマクリシュナとサーラダーはひとつの部屋でともに過ごしましたが、生涯一度も肉体的な関係を持つことはありませんでした。
 それどころかこの時期、昼夜を問わずに至高の法悦状態に入り続けるラーマクリシュナに、サーラダーは戸惑いを隠せませんでした。ラーマクリシュナは夜も一睡もすることなく、神に酔った状態で意味不明の言葉を話したり、泣いたり、笑ったり、死体のように不動になったりしました。
 あるときはラーマクリシュナがサマーディに入り、死体のような状態になったまま、長い間この世の意識に戻ってこないこともありました。サーラダーは恐怖しましたが、このような時はラーマクリシュナの耳元で神の御名を繰り返せば意識がこの世に戻ってくると知り、それからはそのようにしました。しかしラーマクリシュナがいつそのような状態に入るかまったくわからなかったので、心配したサーラダーは、いつもラーマクリシュナと一緒に一晩中起きていました。そのようなサーラダーの苦労を知ったラーマクリシュナは、これからは一緒の部屋で寝ずに、少し離れたナハヴァトという場所で休むように指示しました。

 ナハヴァトのサーラダーの住居は湿気が多く、そのためサーラダーはひどい赤痢に冒されてしまいました。1875年9月、小康状態にあったサーラダーは、故郷のジャイラームヴァーティに帰りました。しかしまもなく病はぶり返し、生命の危機に陥りました。
 サーラダーの危篤を耳にしたラーマクリシュナは、非常に悲しんでこう言いました。
『どうなってしまうのだろうか。この世にやってきて去るだけなら、肉体の形をとったことの目的をいつ果たせようか!』
 サーラダー自身は、やせ衰えた自分の体を鏡で見てこう言いました。
『まったくうんざりだわ! 肉体などというものは! 今ここで脱ぎ捨てさせてください。どうしてこれ以上生かしておくことなどありましょうか。』

 あるとき、サーラダーの体中がひどくむくみ、体中の穴から体液が流れ、目もほとんど見えなくなってしまいました。
 サーラダーの弟は彼女に、
『シンハ・ヴァービニー女神の像の前に横たわり、女神が妙薬を与えてくれるまで、飲食を断つべきだ』
と言いました。サーラダーも同意し、サーラダーは飲食を断ってシンハ・ヴァービニー女神の前に横たわりました。しばらくするとついにサーラダーのヴィジョンに女神が現われ、ひょうたんの花の絞り汁に塩を混ぜたものを点眼するようにと指示しました。サーラダーが言われたとおりにすると、目が見えるようになり、病も回復に向かいました。

 ラーマクリシュナ自身もサーラダーの故郷のジャイラームヴァティに何度か訪問しましたが、皆からよく『狂った婿』として嘲笑されていました。ラーマクリシュナは時々座席から飛び上がって、
『このたびは、イスラム教徒も不可触賤民(チャンダーラ)も含めて皆が救われるだろう!』
などと叫びました。村人たちは、『なんと気の狂ったことを!』と言いました。
 ラーマクリシュナはどこへ行ってもいつも皆の中心でくつろぎ、歌と話で皆を大いに楽しませました。しかし時に人の偽善を砕く鋭い言葉や、きわどい冗談などを発し、決まりが悪くなって座を立つ者もいました。そのような時、ラーマクリシュナはその場に残った者たちに言うのでした。
『雑草抜きは終わった。さあ、腰を下ろしなさい。私が話をしよう。』

つづく

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