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クンサン・ラマの教え 第一部 第四章「カルマ:原因と結果の法則」(2)

2.十の悪しき行ないの結果

 十の悪しき行ないのカルマにより、四つの結果が生み出される。完全に成熟した結果、原因と相似した結果、条件を与えられる結果、増大する結果の四つである。
 
完全に成熟した結果:たとえば嫌悪によって十の悪しき行ないを犯すと、地獄に生まれる。愛著による場合は低級霊に生まれ変わり、迷妄による場合は動物に生まれ変わる。
 あるいはたとえば強烈な愛著や嫌悪や迷妄によって悪しき行ないを積み重ねれば、地獄に生まれ変わる。その衝動がそれほど強くなく、回数も少なければ、低級霊として生まれ変わる。そしてさらに衝動が弱く、回数が少なければ、動物に生まれ変わる。

原因と相似の結果:完全に成熟した結果により三悪趣に落ちた後、そこから脱したとしても、原因と相似の結果を受ける。それには次の二種類がある。原因と相似の行ないと、原因と似た経験である。

原因と相似の行ない:以前に殺したことがあれば、殺すことを好むようになる。以前に盗みを働けば、与えられないものを盗むことに喜びを見出す。
 たとえば虫を見ると殺してしまう子供がいるのは、このような理由からである。この場合、殺生の行為が、過去世において行なった行為と相似した行ないに相当する。
 人はそれぞれ様々なカルマによって、それぞれ違った行ないをなす。殺生や盗みを楽しむ者もいれば、そのようなことはせずに、善い行ないをする者もいる。今生の悪い習性は過去世の悪業の名残であり、原因と相似の結果である。
 よって、次のように説かれている。

 過去世の行ないを見たければ、今持っているものを見よ。
 来世を見たければ、今の行ないを見よ。

 同じことは他の生命体、たとえば動物にもいえる。鷹や狼などが他の動物を殺し、ネズミが物を盗むといった本能は、過去世の行ないと相似の結果であり、また、過去世の行ないによって生じた結果でもある。

原因と相似の経験:十の悪しき行ないの結果、たとえば以下のような結果が生じる。

 殺生:過去世において殺生を行なっていると、今生の寿命が短くなる。
 また、それだけではなく、たびたび病気になる。
 過去世の殺生のカルマが原因で、生まれたばかりの赤ん坊が死ぬこともある。何度も何度も、生まれてすぐに死ぬことを繰り返すこともある。
 また、ある程度の年数は生きるが、幼少期から死ぬまで、絶え間なく病気にさいなまれることもある。
 このような場合、過去世の行ないを懺悔することが重要である。懺悔し、二度とそのような行ないをしないと誓うとよい。悪業の解毒剤として、今後は善き行ないをなし、悪しき行ないをしないように努力することが重要である。

 与えられていないものを盗むこと:盗みによって、貧乏になる。
 また、それだけではなく、略奪や盗難などに遭いやすくなる。
 ほんの少しの持ち物でさえも、敵や競争者の手に渡ってしまう。
 よって、お金や持ち物に困窮している者は、お金を求めて悪戦苦闘するよりも、功徳を積むほうがよい。過去世において他者に与えることがなかったために金持ちになれないのであるから、因がないのに結果を求めて努力をしても意味がない。
 一方、過去世において他者に気前よく与えていた者は、その結果、生涯にわたって財産に不自由することがない。それゆえ、お金持ちになりたければ、布施などの功徳を積むべきである。
 ジャンブ州においては、行ないの結果に特別な力が与えられるため、来世を待たずとも、人生の最初に頃の行なったことが人生の後半に結果を現わしたり、あるいは特別な状況においては、即座にその結果が現われることもある。よって、金持ちになりたくて、目先の結果を求め、盗みや詐欺などを行なうことは、望みとは正反対の結果を生む行ないである。そのカルマの結果、多くのカルパの間、低級霊の世界に留め置かれる。今生においても、さらに貧乏になり、さらに多くの問題が生じてくる。
 また、貪欲になると、どれほど資産があっても、より多くのものを求めることになり、財産が悪しき行ないの原因となる。持っていても使うことのできない宝を守る餓鬼のようになる。
 ある種のお金持ちを観察してみなさい。今生と来世の幸福の源であるダルマのために財産を惜しげもなく使うこともなく、さらに食料や衣服のためにも財産を使わないのであれば、実際には貧乏人よりも貧乏である。その餓鬼のようなふるまいは、原因と相似のカルマの結果であり、過去世においてけがれの混じった施しをしたことの結果である。
 
 邪淫:邪淫を行なうと、魅力的でなくなる。
 また、それだけではなく、だらしなく下品なふるまいをする配偶者を持つといわれている。
 夫婦が言い争い、お互いを非難し合ったりするのも、過去の邪淫の結果である。それを認識して、お互いを憎むことをやめて、お互いに忍耐するべきである。

 嘘:過去世において嘘をついたという原因の結果は、常に人から批判され、低く見られるということである。
 また、それだけではなく、自分も他人から嘘をつかれる。
 もし今生において、根拠なく人から非難されたり批判されたりしているのであれば、それは過去世において嘘をついた結果である。よって、そのようなことを言ってくる人に対して怒ったり侮辱したりせずに、自分の多くの悪業を滅する手伝いをしてくれていることに感謝し、幸せに思うべきである。
 リクジン・ジグメ・リンパは、次のように説いている。

 あなたがなした善いことに対して、悪しき行ないで返されることにより、修行は進歩する。
 敵からの根拠なき非難は、あなたを善に向かわせる鞭である。
 敵は、あなたの執着と欲望を破壊する師である。
 その大きな優しさには、報いることができないほどである。

 不和の種をまく:不和の種をまいたことの相似の結果は、仲間や召使いなどとうまくやっていけないということである。
 また、それだけではなく、しょっちゅう議論をふっかけられたり、人から反抗されるということである。
 ラマに仕える僧侶たち、主人に仕える召使いたちなどは、ほとんどの場合、お互いにうまくいかない。何度頼んでも頼みを聞かず、口答えして反抗する。とても簡単な仕事を頼んでも、聞こえていないふりをされる。家の主人が二、三度命令を繰り返すと、腹を立てて暴言を吐き、ゆっくりしぶしぶと頼まれたことをする。終わっても報告もせず、いつも不機嫌である。しかしこの主人も、過去世において自分がまいた不和の種を刈り取っているだけである。それゆえに、過去の悪しき行ないを反省して、他者と和解しなければならない。

 悪口:過去世において悪口を言った者は、今生において自分が攻撃的な言葉や侮辱的な言葉を言われることになる。
 また、それだけではなく、自分が言ったことが常に議論を巻き起こすようになる。
 悪口は、言葉に関する四つの悪しき行ないの中でも最も悪い。
 次のような格言がある。

 言葉には矢も剣もないが、人の心をバラバラに切り裂く。

 急に他人に腹を立てたり、あるいは最悪の場合は聖者に対してたった一言でも攻撃的なことを言ったりすることで、三悪趣に何度も生まれ変わり、なかなか解放されなくなる。
 昔、カピラという名前のブラーフマナが、ブッダ・カッサパの弟子を、「馬の頭」とか「牛の頭」などと言って侮辱したことがあった。すると彼は頭が十八もある海の化け物として生まれ変わり、そのカルパが終わるまでその状態から解放されず、さらにそこから地獄に生まれ変わった。
 ある尼僧は、別の尼僧を「売女」と呼んだことによって、自分が五百回、売春婦として生まれ変わった。
 似たような話はたくさんある。よって、いつも穏やかに優しく話すように心がけなければならない。
 さらに、誰が聖者で誰が菩薩であるか、見た目ではなかなかわからないのであるから、どんな人と話す時にも相手を尊重するように心がけなさい。菩薩に対して非難したり攻撃的に話したりすることは、三界のすべての衆生を殺すことよりも悪しきことであるといわれている。

 菩薩を傷つけることは、三界のすべての生き物を殺すことよりも大きな罪である。
 このようなひどい過ちを積み重ねてきたことを懺悔いたします。

 
 意味のないおしゃべり:意味のないおしゃべりの相似の結果は、自分が話すことが周りにまじめに受け取られなくなるということである。
 また、それだけではなく、決断力や自信に欠けるようになってしまう。
 真実を話しても誰も信じてくれなくなり、また、おおぜいの前で話すときも自信が持てなくなってしまう。

 愛著:愛著の相似の結果は、最も望んでいることが妨げられてしまうということである。
 また、それだけではなく、望む環境を得ることがほとんどなくなるということである。

 嫌悪:嫌悪の相似の結果は、いつもおびえて暮らすようになるということである。
 また、それだけではなく、実際に常に危害を与えられて苦しむということである。

 誤った見解:誤った見解を持つことの相似の結果は、誤った信念に固執するということである。
 また、それだけではなく、欺瞞や誤解によって心が乱されるということである。

条件を与えられる結果:これは、過去の悪しき行ないによって周囲の環境が決定されることである。
 殺生により、薄暗くわびしく、非常に危険な渓谷や、絶壁が多くある場所に生まれ変わる。
 与えられていないものを盗むことにより、霜などが作物を枯らし、木には実がならず、飢饉に見舞われるような土地に生まれ変わる。
 邪淫によって、排泄物、糞、泥などに満ちた嫌な場所に生まれ変わる。
 嘘をつくことにより、物質的に不安定になり、常に心がパニックに陥り、恐ろしい物事や状況に見舞われる。
 不和の種をまくことにより、深い渓谷や、岩だらけの渓谷などによって隔てられ、外に出ることが難しい場所に生まれ変わる。
 意味のないおしゃべりにより、不毛な土地に生まれ変わる。そこでは、季節は乱れて予想することが難しく、働いても何も手に入らない。
 愛著により、作物が育たず荒れ果てて、あらゆる病が蔓延した土地に生まれ変わる。
 嫌悪により、多種多様な苦しみに満ち、常に恐怖にさらされる場所に生まれ変わる。
 誤った見解により、助けもなく守ってくれる者もいない貧乏な場所に生まれ変わる。

増大する結果:増大する結果とは、以前に行なったことを何度も繰り返す傾向のことである。よって、その後の転生においても苦しみが常に終わることなく続く。悪しき行ないが増大し続けることで、果てしなくサンサーラをさまよい続けることになる。

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