クンサン・ラマの教え 第一部 第六章「師にいかに従うか」(5)

素晴らしい師に出会ったならば、サダープラルディタ菩薩がダルモードガタ菩薩に、偉大な賢者ナーローパが最高のティローパに、ジェツン・ミラレーパがロタクのマルパに従ったように、自分の命や身体の心配をすることなく師に従いなさい。
まずサダープラルディタ菩薩がダルモードガタの弟子になった物語から述べよう。サダープラルディタは智慧の完成の教えを求めていた。
ある日、天から「幸運な者よ、東に行けば、智慧の完成の教えを受けることができる。肉体的な疲れや、眠気、だるさを気にせず、昼夜も関係なく進みなさい。わき見をしてはいけません。そうすればほどなく、ダルマを体現した師より、智慧の完成を授けられるでしょう。そのときには、幸運な息子よ、その師に従い、授かったダルマを大切にしなさい。たとえその師が五感の快楽にふけっているように見えても、菩薩は弟子を導くための方便に長けていることを理解して、決して信を失ってはいけません」という声を聴いた。
この言葉通りに、サダープラルディタは東に向けて出発した。しかしすぐに、どのくらい行ったらいいのかその天の声に聞くのを忘れていたのに気づき、むせび泣いて悲しんだが、疲労や飢えや渇きや眠気も、昼も夜も、教えを授かるまでは忘れると誓った。たった一人の子供を失った母のように打ちひしがれて、いつ智慧の完成の教えを聞くことができるのかというたった一つの思いで頭がいっぱいであった。
そのときサダープラルディタの前に如来が現われて、サダープラルディタのダルマを求める心を称賛して、こう言った。
「ここから二千五百キロ進むと、風薫る町という名前の、七つの貴重な物質でできている町がある。その町の中心に、ダルモードガタ菩薩が住んでいる。その住居も七つの貴重な物質でできていて、周囲は五キロもあり、庭などのすべてが素晴らしいつくりである。そこにダルモードガタ菩薩はお付きの者と住んでいる。ダルモードガタは、六万八千の女性と五感の享楽に浸りつつ、望むことは何でも思い通りにして、この上ない快楽を享受している。過去・現在・未来において、人々に智慧の完成を教えている。ダルモードガタに会えば、智慧の完成の教えを聞くことができるだろう。」
サダープラルディタは、この言葉以外は何も考えられなくなってしまい、遠い場所にいるダルモードガタ菩薩の声が聞こえてくるほどになり、深いサマーディを何度も経験した。宇宙の十方の様々な場所を知覚し、無数の仏陀が智慧の完成を教えている姿を見た。無数の仏陀はダルモードガタを称えて消えていった。サダープラルディタは、ダルモードガタ菩薩への称賛、信、尊敬に満たされて、こう考えた。
「わたしは貧乏で、師に何も差し上げる物がない。服も、宝石も、香水も、装飾品も、師への尊敬を表わす供物も何もない。そうだ、自分の体を売って、手に入れたお金をダルモードガタ菩薩に差し上げよう。わたしは無始の過去から、輪廻において、数えきれないほど、自分の体を無駄に使ってきた。地獄においては、身体を無数に切り刻まれた。それでもこんな素晴らしい師にこの身体を供養することはなかった。」
そこでサダープラルディタは市場の真ん中に行き、「人を欲しい人はいませんか? 人を買いたい人はいませんか?」と叫んだ。
しかし、サダープラルディタのこのような献身を邪魔しようとした悪魔がサダープラルディタの言葉を皆が聞こえないようにしたために、誰も買ってくれる人は現われなかった。サダープラルディタは座り込んで泣いた。
そこに、サダープラルディタの決意を確かめようとして、若いブラーフミンに姿を変えた神々の王インドラが、サダープラルディタの前に現われて言った。
「人間全部は必要ないが、儀式に使うための人間の肉と脂肪、骨、髄が欲しい。もし売ってくれるのであれば、わたしが買いましょう。」
サダープラルディタは喜んで、鋭いナイフで自分の右腕を切ると、血が噴き出した。また、右腿から肉を切り落とした。さらに骨を折ろうとしているとき、その様子を家の屋上から見ていた裕福な商人の娘が駆け下りて来て言った。
「高貴なお方よ。なぜ自分にそのような痛みを与えるのですか?」
サダープラルディタは、自分の身体を売って、ダルモードガタ菩薩に供物を捧げたいのだと説明した。
「そのようにしてまでその師に敬意を表して、何の得があるのですか?」と娘が聞くと、サダープラルディタは答えた。
「悟りへと至るための優れた方法と、智慧の完成を、ダルモードガタ菩薩が教えてくれるのです。その修行によって全智の境地を得て、ブッダの多くの特性を身につけることができ、ダルマによって衆生を救うことができるのです。」
「そのような特性は、ガンガーの砂粒と同じくらいの数の身体を捧げるにふさわしいのは確かです。でも、こんなふうに身体を傷つけないでください。ダルモードガタ菩薩に尊敬を示すために必要な供物はすべて差し上げます。そうすることで、わたしも功徳を得て、ブッダの特性を得ることができますように」
と娘は言った。
するとインドラも本当の姿を現わして、サダープラルディタに言った。
「わたしはインドラであり、神々の王である。お前の決意を試したのである。お前の身体を元通りにしてやろう。そして欲しいものは何でもやろう。言ってみなさい。」
そこでサダープラルディタが「仏陀の比類なき功徳を授けてください」と言うと、インドラは「それはできない。わたしの領分ではない」と答えた。
サダープラルディタは言った。
「それならば、何もいりません。わたしの身体を元通りにする必要もありません。わたしは真実の祝福に呼びかけます。仏陀の祝福と、わたしの最高の、そしてゆるぎない決意が真実であること、わたしの言葉が真実であることによって、身体がもとに戻りますように。」
この言葉によってサダープラルディタの身体は元通りになった。
サダープラルディタは娘の家に行き、ことの経緯を話すと、両親は、ダルモードガタ菩薩に供養するための無数の供物を与えてくれた。そしてサダープラルディタは、娘とその両親、そして五百人の従者たちとともに、馬車に乗って東へ向かった。そして【風薫る街】に到着すると、馬車を下りてダルモードガタ菩薩の元へと向かった。
そのときダルモードガタは、【智慧の完成】の寺院を建設していた。その寺院は七つの貴重な物質からできており、赤い白檀の木で飾られ、真珠の金線細工で覆われていた。四つの方角には、明かりを照らす如意宝珠と、黒いアロエの香木の香りを漂わせた銀の吊り香炉が置かれていた。寺院の中央には宝石で飾られた四つの宝箱があり、金と瑠璃のインクで書かれた【智慧の完成】の経典が収蔵されていた。
サダープラルディタは、商人夫妻とその娘と五百人の従者と共に、素晴らしい供物を供養した。そして弟子に教えを説いているダルモードガタに近づくと、尊敬を表わした。商人の娘と他の少女たちは、素晴らしい菩提心の誓いを立てた。
サダープラルディタは、自分が以前に見た仏陀はどこから来てどこに行ったのかと尋ねた。ダルモードガタは、「仏陀は来るのでもなく、行くのでもない」と説明した。そして座を離れると、自分の住居に向かい、そこで七年間の瞑想に入った。
ダルモードガタが瞑想に入っている間、サダープラルディタと商人の娘、そして五百人の従者たちは、座ることも寝そべることもなく、常に立っていた。立っているときも歩いているときも、ダルモードガタが瞑想を終えてもう一度ダルマを教えてくれる瞬間のことのみを一心に考えていた。
ダルモードガタの七年間の瞑想が終わりに近づいたころ、サダープラルディタは、七日以内にダルモードガタが瞑想を終えて再び教え始めるだろうと告げる神々の声を聞いた。そこでサダープラルディタは五百人の従者と共に、ダルモードガタが教えを説く場所の五百メートル四方を掃除した。しかし、埃を洗い流すために床に水をまき始めたとき、悪魔が水をすべて消してしまった。そこでサダープラルディタは自分の血管を切って血を流して水気の足しにし、それを見た商人の娘と五百人の従者も同様にした。それによって辺りは血まみれになったが、神々の王・インドラが、それらを天界の赤い白檀に変えた。
ついに瞑想から起き上がったダルモードガタ菩薩がやってきて、サダープラルディタたちが完璧に整えた獅子の玉座に座った。ダルモードガタが智慧の完成の教えを説くと、サダープラルディタは六百万種類の瞑想の状態を経験し、無限の数の仏陀を見た。その無限の仏陀たちは、夢の中でさえも去ることはなかった。
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