yoga school kailas

アディヤートマ・ラーマーヤナ(9)「ラーマとシーターの結婚」

第六章 ラーマとシーターの結婚

◎ミティラーへの旅

 その後、ヴィシュヴァーミトラは、ラーマとラクシュマナにこう言った。

「おお、最愛の御子たちよ! さあ、ジャナカ王によって統治されているミティラー国に行こう。
 そこで執り行われる偉大なる供儀を見た後、アヨーディヤーに帰ろうではないか。」 

 そう言うと、彼はラーマとラクシュマナと共に、ガンガーを渡るために出発した。しかしそこで船頭が、ラーマを船に乗せることを拒んだのだった。
 船頭は言った。

「おお、主よ! 私はまず、あなたの御足を洗って、綺麗にしたいのです。石と木製のものとに何の違いがありましょうか? あなたの御足の塵は何でも人間に変えてしまうというニュース(アハーリヤーに起こったこと)は、多くの者がすでに知っております。
 したがって、私はあなたの御足から一切の塵を洗い流しましょう、そうしたら、あなたを対岸へとお送りいたします。そうしなければ、私の船が若い女性に変わってしまう危険がありますのでね。そうすれば、私の家族の生計が危険にさらされることはないでしょう。」

 そう言うと、彼はラーマの御足を洗い、それから、一行を河の対岸へと連れて行ったのだった。それからヴィシュヴァ―ミトラは、ラグ族のリーダーであるラーマを伴って、ミティラー王国に向かった。

◎シヴァの弓の破壊

 朝までに、一行はジャナカ・ヴィデーハの王国ミティラーに到着した。ヴィシュヴァーミトラはリシたちの住居に行き、そこに彼の逗留地を定めた。ヴィシュヴァーミトラが来たと聞いて、ジャナカ王は喜び、礼拝のために必要な供物をすべて集め、自らのグルと共に、大きな喜びを持って聖仙のもとへと行き、彼の前でひれ伏し、正式な方法で彼を礼拝した。
 そこで、太陽と月のようにその光輝によって一切処を照らし、その御身体に一切の吉兆の印を有しておられるラグ族の二人の王子を見て、ジャナカはこう尋ねた。

「この神の子のような二人の勇敢なる少年たちは誰でありますか? 彼らは誰の息子なのでしょうか? 私の心は、彼らを見ると歓喜に満たされます。それはまるで、ナラとナーラーヤナを見ているときのようであります。」

 それらの言葉に喜び、聖仙ヴィシュヴァーミトラは、彼を喜ばせるようにこう言った。

「彼らは、ラーマとラクシュマナという二人の兄弟であります。彼らはなんとダシャラタ王の息子たちなのです。
 私の供儀を悪魔の邪魔から守護するために、私は彼らを彼らの父の宮殿から連れてきたのです。途中、ラグ族の勇敢なるラーマは、たった一本の矢で、世界の恐怖であるタタカを殺戮しました。その後、私のアシュラムに到着し、そこでスバーフをはじめとするその他の悪魔たちを抹殺し、そして奴らの仲間であるマーリーチャを吹っ飛ばして、海へと放り込みました。
 聖河ガンガーの岸に到着し、そこに位置しているゴータマのアシュラムに行き、彼はその御足で触れることによって、呪いによって石に変えられていたゴータマの妻アハーリヤーを解放したのです。彼は彼女を人間の姿に戻したのです。彼自らがアハーリヤーを称賛した後、彼は彼女によって礼拝されました。
 そして今、彼はあなたの宮殿にやって来たのです。彼はあなたがお持ちのシヴァの大弓を見たいのです。それは一切処から、王族がこぞって見にやって来たことでよく知られております。ゆえに、おお、偉大なる王よ、その弓を是非彼に見せてください。それを見た後、彼は父に会いにアヨーディヤーに帰るでありましょう。」

 それらの聖仙の言葉を聞くと、ダルマを知る者であるジャナカ王は、それらの王子は一切の尊敬の念に満ちた歓迎を受けるに相応しいということを理解した。ゆえに彼は、シャーストラによって規定された儀式をもって、彼らに敬意を払った。
 それから王は極めて優秀な大臣を呼び出し、彼に言った。

「ラーマにパラメーシュワラの弓をお見せしたいので、それを早急にここに持ってきておくれ。」

 大臣が出て行った後、ジャナカ王はヴィシュヴァーミトラにこう言った。

「ラーマがこの弓を持ち上げ、それに弦を張ることができたなら、私はわが娘シーターを彼に必ず差し上げましょう。」 

 このとき、ヴィシュヴァ―ミトラは微笑んでラーマを見つめて、こう言った。

「ほう、ではそのようにしてみましょう。即刻、無限なる武勇を備えたラーマに、その気高き弓を見せてやってください。」 

 聖仙がそのような言葉を発すると、その弓がそこに運ばれてきた。
 五千人の頑健なる男たちが、無数の宝石とダイヤモンドで飾られ、そこに幾多の小さなベルをつけた弓を運んで来たのだ。
 その極めて優秀な大臣は、ラーマの前にその弓を誇示した。それを見るやラーマは喜んで、身につけていた布をきつくしばり、まるで遊ぶようにして、左手でその弓を持ち上げ、すべての主権者の面前で、それに弦を張ったのだ。
 弓を左手で持ち、右手でその弦を引っ張ると、全宇宙のエネルギーの顕現そのものであられるラーマは、その弓を破壊し、一切処から驚異的な音を轟かせたのだった。
 その音は一切の世界――天界、人間界、巨人の世界まで届いた。空に滞在していた神々は、驚いてこの光景を見たのだ。
 彼らは花の雨で大地を覆い、賛歌を唱え、ラーマの栄光を賛美し、ケトルドラムを打ち鳴らし、その間、芸術の神々は喜びの中で踊っていたのだった。

◎シーターがラーマをお選びになる

 弓が壊されたのを見て、ジャナカ王はラグの族の中で最も気高きラーマを抱擁した。そのとき、その場所の中庭にいた女性は、大変驚きつつそれを見つめていたのだった。
 そして、装飾によって一層高まった生まれながらの華麗なる御姿で、シーターが到着した。彼女は、真珠の首飾りや耳飾りのようなさまざまな種類の装飾品で飾られていた。御足には気持ちの良いチリンチリンという音を出す足輪をつけ、シルクの衣と胸の輪郭をかすかに見せるような細い金色の上着で着飾り、微笑みながらラーマに向かって近づいてきて、彼女が右手に持っていた金の首飾りをラーマの首にかけたのだった。
 微笑で飾られた彼女の御顔は、彼女のハートの至高なる歓喜を啓示していた。廊下の窓から外を眺めていた王家の一家の女性たちは、大きな喜びを持って、全世界を魅了した優美な美しさを御持ちのシーターとラーマの御姿を見たのだ。そして、すべての聖典に通じているジャナカ王は、次ように聖仙ヴィシュヴァ―ミトラに言った。

「おお、大聖者ヴィシュヴァーミトラよ! ダシャラタ王に、彼が息子たちと共にすぐにここに到着するよう、早急にこの知らせを告げる手紙を送ってください。
 彼は妻や大臣と共に、王子たちの結婚式に参列するのを喜ばれるでありましょう。」 

 こうしてすぐに使者たちが送り出されたのだった。
 アヨーディヤーに素早く到着すると、使者たちはラーマの偉大なる功績の知らせをダシャラタ王に伝えた。ダシャラタ王は、抗し難い喜びをもってその知らせを受け取ったのだった。
 彼は、大臣たちに即刻ミティラーに行く準備を整えるように命じた。彼はこのように言った。

「像隊、騎馬隊、馬車からなる軍隊に、先だって王都ミティラーに立つように命じるのだ。そして私が今日にでも出発できるように、私の御者にも準備をするよう命じてくれ。いかなる理由があっても、遅れることがあってはならない。わがグル・ヴァシシュタにも、彼の妻と聖火を伴って先だって出発するように準備をお願いしてくれ。そして同様に、ラーマの母であるわが妃たちにも、先だって出発させなさい。」 

 このようにして旅の出発の手筈を整えると、ダシャラタは素晴らしい馬車に乗り込み、大軍と共に、即刻ミティラーへと出発した。ダシャラタ王のミティラーへの到着の知らせはジャナカ王に届き、そのラージャリシの心は大歓喜で満たされたのであった。
 ジャナカ王は、彼のグル・サットアーナンダを伴って、尊き客人を出迎えるよう急ぎ、そのような出来事のための伝統と聖典によって示される課程に則って、歓迎の儀式の準備した。
 それからラーマとラクシュマナは、ひれ伏して彼らの父の御足に礼拝した。ダシャラタは喜びでいっぱいになり、ラーマにこのように話した。

「おお、ラーマよ! 私はお前の蓮華のような顔に再び見えることができて幸運だよ。聖仙ヴィシュヴァーミトラの恩寵によって、すべての状況がわれわれの利益へと変わり、素晴らしい幸運をわれわれにもたらしてくださった。」

 そう言うと、彼はラーマを抱きしめ、何度も何度も彼の頭頂の匂いを嗅いだ。それによって、彼はブラフマンの至福を楽しむ者のように、歓喜の絶頂に達したのであった。
 そして妻と息子と共に、ダシャラタはあらゆる種類の快適さと楽しみを備えた広々とした宮殿を、ジャナカ王によって提供されたのであった。

◎結婚式

 すぐ後に、吉兆な日の吉兆な時間に、ダルマによく精通しているジャナカ王は、如意宝珠で飾られた柱で支えられ、特別に建築された結婚式会場に、ラーマとその弟たちを連れて行った。そのホールは、広々として、豪華で、花綱、旗、天蓋、そして、大量の真珠の数珠、果物、花でよく飾られていた。そこに、ヴェーダを学び、金の装飾を身に着けたブラーフマナの一団がいて、その一方、最高の衣装で着飾り、光り輝く宝石で飾られた女性がその側面に立っていた。そして、踊り、音楽、打楽器の演奏などが、祝祭の雰囲気をさらに加えていた。ラーマは、そのような壮大な結婚式会場に誘われ、すべての種類の貴重な宝珠で装飾された金の台座に座らせられたのであった。
 グル・サットアーナンダは、一切の正統な儀式をもって、聖仙ヴァシシュタとヴィシュヴァーミトラを讃え、彼らをラーマの左右に座らせた。それから彼は、結婚式が執り行われる場所の前に聖火を灯した。そして一切の宝石類と他の装飾品で眩く輝くシーターが、結婚式場に案内された。そして次にジャナカ王が、彼の妻と共に、ラーマの近くへ行き、その御足を洗い、自らの頭にその水を振りかけたのだった。
 至高者の化身であるラーマの御足の水は、マハーヴィシュヌの御足を洗った水――ブラフマーとシヴァがその頭に受けるほど神聖だと考えている水と同一のものなのである。
 次に、シーターの御手をつかんで、ジャナカは、パニグラハナの儀式(花婿が花嫁の手を取る儀式)に則って、彼女を水の供養とアクシャタ(不滅の米)と共にラーマに差し出した。彼は言った。

「これをもって私は、蓮華の眼を持ち、真珠と金で飾られたわが娘シーターを、あなたにお渡しする。 
 おお、ラーマよ、ラグの最高者よ! どうかあなたがこの供養によって喜ばれますように。」 

 このように言うとジャナカは、乳海の神がマハーヴィシュヌにラクシュミーを捧げるときのように、歓喜で溢れかえった心でシーターをラーマに差し出したという象徴として、シーターの御手をラーマの御手の上に置いたのであった。
 このときに同時に、ジャナカは自らの娘ウルミーラーをラクシュマナと結婚させ、そして彼の兄弟の娘のマンダーヴィーとスルティキールティをそれぞれバラタとシャトルグナと結婚させたのだった。
 それらの妻たちと結婚し、美しき王子たちは、ローカパーラ(天界の宮殿の守護者)のように眩く光り輝いていたのだった。

◎シーターの本性についてのジャナカの説明

 さて、結婚式が終わり、ジャナカは聖仙ヴァシシュタとヴィシュヴァ―ミトラに、ナーラダから聞いたシーターの過去生について物語った。

 ジャナカは言った。

「私がかつて、供儀のためにある土地を聖なる場と変えようと考えて、その場を耕していたときでありました。私は、その土地(シーター・ムカート)の轍の一つから、美しい女の子を受け取ったのです。
 その月のような赤子を自分の娘のように愛おしく見つめ、私は彼女をわが妃に託しました。
 ある日、私が隠遁所に籠っているときに、聖仙ナーラダがそこへ来て、彼の有名なヴィーナの伴奏で、一切に偏在するナーラーヤナの賛美を歌ったのです。聖仙ナーラダは讃嘆をし終えると、心地よい座に座り、私に向かってこう言いました。

『私から、あなたを繁栄へと導くであろう秘密を聞きなさい。
 帰依者を祝福するために、ラーヴァナを滅ぼすために、そして、天人たちの目的の成就のために、指導者であり、感覚の征服者であられる至高者が御自ら、彼のマーヤーの御力によってとられた人間の御姿で降誕された。彼は、ダシャラタの息子として世界に名高いシュリ―・ラーマとしてお生まれになられた。この転生において、主は四つのフォームをおとりになられた。
 彼の霊的な相対物であるヨーガ・マーヤーは、御自らあなたの家系の中に顕現された。いかなる手段を使ってでも、彼女をラーマと結婚させるように努めなさい。ラーマ以外の者とは結婚させてはならぬ。
 なぜならば、パラーマートマンであられるラーマの永遠なる伴侶であるラクシュミーは、今まで他の誰の妻にもなったことがないからである。』

 このように私に指示し、その聖仙は、彼の神聖なる住居へと旅立って行ったのでした。
 そのときからずっと私は、シーターをマハーヴィシュヌのコンソート、ラクシュミーとして見なし、私は如何にして私の吉兆なる娘である彼女をラーマに嫁として差し出すことができるだろうかと考えるようになりました。
 私の先祖から伝わる宮殿の中に、シヴァ神がトルプラスを破滅させたこの弓はがありました。私はこの弓に弦を張ることを決意しましたが、娘と結婚することを熱望する者に対しての賭けの対象であるその弓は、それを試みるすべての者の高慢を打ち砕たのでした。
 おお、偉大なる聖者よ! しかしあなたの恩寵によって、ラーマはこの弓をご覧になるためにここにいらして、私の積年の願いを叶えてくださいました。
 おお、ラーマよ、今日私は、夫と妻としてシーターと共に座られるあなたを拝見することができて幸運であります。実にこのようにして、私の人生の目的は達成されたのです。
 あなたの御足を洗った水を頭に振りかけたがゆえ、創造神ブラフマーは、創造のサイクルを開始し、管理する力を得たのです。
 阿修羅の王バリは、あなたの御足の聖水を自らに振りまいたことで、天界の王インドラとなりました。
 そして今日、おお、至高なる救世主よ、あなたの御足の塵は、夫の呪いからアハーリヤーを救済されました。
 あなたの蓮華の御足の塵への強烈な信仰によって、偉大なるヨーギーたちは時の輪を克服し、輪廻の生の恐れを超越しました。
 聖なる御名を持つあなたの賛美と称賛に没頭することで、神々は自らの悲哀と苦しみを克服したのです。
 ――あなたただお一人に、私は今まで以上に、永遠に帰依いたします。」

◎ラーマのアヨーディヤーへの旅立ち

 このようにラーマを賛嘆した後、ジャナカ王は、ラグ族の気高き魂に、高価な贈り物を差し上げた。彼は、十億ルピーの金貨、千台の馬車、一万頭の馬、六百頭の象、十万人の歩兵、三百人の侍女を彼に捧げた。それに加えて、彼は彼の愛しい娘のシーターに、宝珠と真珠で眩く輝く衣と宝石類を贈ったのであった。
 慣習に則って、ヴァシシュタのような聖仙、王子であるバラタとラクシュマナ、そして同様にダシャラタ王を賛美した後、ジャナカ王は、ラグの主ラーマに別れを告げた。その後、眼に涙を浮かべながら、王の妻たちは、涙を流す娘のシーターを抱擁し、このように助言した。

「おお、愛しき者よ、お前の夫の父と母に献身するのだよ。
 お前の夫がどこにいようとも、彼と共にありなさい。
 慎み深い妻のダルマを遵守しなさい。
 そして、幸せに生きるのだよ。」

 そして、巨大で荘厳なる音が人間と神々の太鼓と打楽器の楽団から鳴り響いた。それは、ラーマがミティラーからアヨーディヤーへと出発したことを示していたのだった。

share

  • Twitterにシェアする
  • Facebookにシェアする
  • Lineにシェアする