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アディヤートマ・ラーマーヤナ(8)「アハーリヤーの救済」

第五章 アハーリヤーの救済

◎スバーフの殺戮

 数多くのリシたちによって住まれ、魅力的な景色をもたらすカマシュラムとして知られる場所の森のアシュラムで一夜を過ごした後、一行は早朝に、ゆっくりと旅を再開した。
 彼らがシッダとチャラナたちが集まるシッダアシュラムに到着すると、そこに住んでいる苦行者たちは、ラーマとラクシュマナを暖かく歓迎したのだった。
 その後、ラーマは聖仙ヴィシュヴァーミトラにこのように懇願した。

「おお、聖者様よ! 御身の供儀をお始めください。
 そして、御身を悩ます凶悪な悪魔がどの方向からやってくるのかを私にお示しください。」 

 聖仙ヴィシュヴァーミトラはそれを承知し、他の場所に住む他の苦行者たちを伴って、供儀を開始した。
 正午の少し前になると、変幻自在の二人の悪魔、マーリーチャとスバーフが現れた。彼らはアシュラムに近づき、血や骨の雨を降らせた。
 その後すぐに、並外れた知性をお持ちのラーマは、矢の弦を耳まで引きつけると、悪魔に向けて二本の矢を放たれたのだ。
 それらの矢の一本はマーリーチャに当たり、彼を百ヨージャナも突き飛ばして海へと沈めた。
 二本目の炎の矢は、スバーフを突き刺して絶命させ、その間に彼の悪魔の従属たちはラクシュマナによって全滅させられたのだった。
 デーヴァたちはラーマとラクシュマナに花の雨を降らせ、彼らのケトルドラムが鳴り始め、シッダとチャラナたちは賛歌を歌ったのであった。

◎ゴータマのアシュラムでのラーマ

 ヴィシュヴァーミトラは、ラーマが受けるにふさわしい一切の名誉を彼に与えた。尊敬と愛に心動かされ、彼はラーマを膝の上に座らせ、涙で眼を溢れさせながら、彼を抱擁した。彼はラーマを弟のラクシュマナと共に、自分のアシュラムに三日間とどまらせ、熟した果物や他の食料を与え、古代の物語や逸話で彼らを楽しませたのだった。
 四日目に、聖仙はラーマに言った。

「おお、ラーマよ! 今まさに執り行われようとしている偉大なる供儀を見に行こうではないか。
 ヴィデーハの街に位置するジャナカ大王の宮殿には、マヘーシュワラによってそこに預けられた聖なる弓がある。
 そなたたちはその強大なる弓を見ることができるのだ。ジャナカ王も敬意を持ってそなたたちを歓迎するだろう。」 

 そう言うと、ヴィシュヴァーミトラは、ラーマとラクシュマナの他に、何人かの他のムニたちを引き連れて出発し、ガンガーを通って、ゴータマの聖なるアシュラムが建ち、アハーリヤーが苦行に従事した場所へと向かったのだった。その場所は、鳥や動物は一切存在せず、天界の花と果物をたくさんつけた木で満たされていた。その場所を見て、蓮華の眼をお持ちのラーマは、ムニにこのように尋ねられた。

「これは誰のアシュラムですか? ここはとても神聖で、非常に魅力的な場所のように見えます。私は、ここは花や果物をつけた木々で満たされていますが、一切の生きものが存在していないように感じます。ここにいると、私は大きな喜びに満たされるのです。これらすべては素晴らしい。おお、大聖者様! どうか、この場所とその特徴についての事実を私にお教えください。」

◎アハーリヤーにかけられた呪いと彼女の解放

 ヴィシュヴァーミトラは言った:おお、ラーマよ! 私がこの場所の古い言い伝えについて話すことをお聞きなさい。 
 ここには、ダルマの遵守者の中で最も高潔であり、世界中に名高いゴータマという大苦行者がいた。彼は、苦行によってシュリー・ハリを礼拝していた。
 ブラフマー神は、彼がブラフマチャーリヤを遵守した非常に厳格な修行に対して大いに喜び、その時代で最も美しく、同様に奉仕の規律に専心することで名高かった御自身の娘アハーリヤーを彼に授けたのだった。
 その偉大なる苦行者ゴータマは、アハーリヤーと共にこの場所に住んでいた。するとインドラ神がこのアハーリヤーに対して強い愛欲を抱き、彼女を騙して、彼女を楽しむための機会を窺っていた。
 聖仙がしばらくアシュラムから外出した時、インドラ神にとっての好機がやってきた。インドラはゴータマに変装してアハーリヤーに近づき、自分の愛欲を満足させた後、ゴータマが帰ってきたので、そこから急いで逃げた。
 インドラが自分(聖仙)の姿に変装して逃げていくのを見て、ゴータマはひどく怒り、インドラにこう尋ねた。

「おい! そこの悪漢め! 私の姿を装っているお前は誰だ?
 真実を話せ。さもなくば、間違いなく、お前を呪いによって灰に変えてしまうぞ!」

 そこでインドラはこう答えた。

「私は天界の王インドラです。私は愛欲の奴隷となってしまいました。私はあなたの許しと保護を求めます。
 私は軽蔑されるべき行為をしてしまいました、私は腹黒い輩です。」

 そこで、怒りで眼を赤くしたゴータマは、彼に呪いの言葉を発したのだ。
 ゴータマは激怒してこのように呪いをかけた。

「おお、悪しき者め! 女性の生殖器を楽しむ輩め! お前の身体に千の女性性器をつけて醜くなるように呪ってやる。」

 このように天界の王インドラに呪いをかけた後、彼は彼の庵に入り、そこで恐怖で震え、合唱して礼拝しているアハーリヤーを見つけた。ゴータマは彼女にこう言った。

「おお、堕落した者め! お前など、このアシュラムの中で石に変わってしまえ。
 昼夜一切の食べ物も飲み物もなく、雨、太陽、風のような天候の厳しさにさらされながら、お前はここで厳格な苦行を実践し、一切の存在のハートに住まう至高者ラーマを瞑想しなさい。私の庵であったこの場所は、今後いかなる生きものも存在しなくなるだろう。
 お前がこの状態で数千年過ごした後、ダシャラタの息子シュリー・ラーマが、弟のラクシュマナを引き連れてこの場所に来られるだろう。彼が、お前が今呪いによって変えられるだろう石にその御足を置かれるとき、お前は罪から解放されるだろう。それからお前は偉大なる信仰心を持ってラーマを敬愛し、彼の周りを回り、彼の前でひれ伏するだろう。呪いの影響から解放されたなら、お前はまた、私に奉仕する機会を得るだろう。」

 そう言うと、ゴータマはそこから出て行き、最も偉大なる山ヒマラヤの上に住居を定めた。その日から、おお、ラーマよ、この場所にあらゆる生きものは見られなくなり、アハーリヤーは、今この瞬間まで、一切の食物を受けないという耐え難い苦行を守り抜き、お前の御足の塵に触れることをずっと待っていたのだ。さあ、ブラフマーの娘でありゴータマの妻であるアハーリヤーを浄化して下さい。

 そう言うと、ヴィシュヴァーミトラはラーマの手をつかんで、アハーリヤーが石の姿で立ち、厳しい苦行を遵守している場所に連れて行った。ラーマがその御足をその石の上に置くや否や、彼は、アハーリヤーがそこから現れて、彼の前に立っているのを見たのだった。
 そしてラグ族のラーマは、アハーリヤーに挨拶をして、御自分の名を彼女に名乗った。それからアハーリヤーは、黄色の絹の衣を纏い、四本の腕に法螺貝、円盤、矛、蓮華を誇らしげに示し、弓と矢を装備し、蓮華のような眼と魅力的な微笑をたたえた御顔を明かし、胸にシュリーヴァスタの印をつけ、エメラルドのような光彩の輝きを持って十方を照らしていらっしゃるマハーヴィシュヌとしての御姿で、ラクシュマナと共にいらっしゃる、ラグ族の最高者ラーマを見たのである。そのようにして、アハーリヤーはラーマの御姿を見たのだ。
 ラーマを見て、アハーリヤーは歓喜の涙を流した。ゴータマの言葉を思い出し、彼女はラーマをナーラーヤナ御自身であると悟ったのである。その聖女は、眼を涙で溢れされ、水と他の供物をもって、正式な形でラーマに礼拝をした。それから彼女は、彼の前に完全にひれ伏して倒れこみ、起き上がってから、もう一度蓮華のような眼をお持ちのラーマを見て、身体全体に鳥肌を立たせ、感情で息が詰まった声で、賛歌をもって彼を称賛し始めたのだった。

◎アハーリヤーの賛嘆

 アハーリヤーは言った:全宇宙の内在者よ! 私は、あなたの蓮華の御足の塵に触れられることで祝福されました。
 あなたに関するすべてのことは、真に素晴らしいのです。おお、ラーマよ! あなたの人間の御姿のみが世界を惑わすのです。なぜなら、十分な至福の中に浸り、自らの存在で全宇宙を埋め尽くす超越的魔術師であるあなたは、特別の現れをおとりにならず、化身として、普通の手と足を有する人間として活動しているからです。
 蓮華の御足の塵をお持ちのあなたは、ガンガーの水を、ブラフマー神のような偉大なる存在でさえをも聖別してしまうほど神聖にします。そのようなあなたが、今私が物質的な眼で見えるように、ここに存在していらっしゃいます。これは明らかに稀な幸運であり、言葉によっては述べることができず、過去に為した私の善行から生じたものです。
 この上なく素晴らしい美しさを持つ身体を示され、蓮華の花弁のような大きな眼を持ち、手に弓をお持ちのラーマとしての人間の御姿で今化身されたシュリー・ハリの他に、私の心が礼拝を捧げるお方はいないのです。
 シュルティの探求の常なる対象である蓮華の御足をお持ちの御方、創造神ブラフマーの誕生の地であるへその蓮華をお持ちの御方、俗物の破壊者である主シヴァの千の御名の中で最も愛されるラーマという聖名をお持ちの御方――そのシュリー・ラーマチャンドラを、私は心の中で瞑想いたします。
 ナーラダやバーヴァ(シヴァ)のような神々、蓮華から生まれたブラフマー、そして同様に、霊性の至福の流れの涙のほとばしりで胸を濡らした学問の女神サラスヴァティーによって、ブラフマローカ(ブラフマーの世界)で讃えられし化身においての使命をお持ちの御方――そのシュリー・ラーマに、私は帰依し奉ります。
 魅力的なラーマは、至高者そのもの。彼は永遠者であり、すべてを明らかにする自性光明の意識であるすべてに遍在する存在。彼は終わりなき第一原因。世界を祝福するために、彼は今、人の心をうっとりさせる美しき御姿をおとりになられました。
 彼は、宇宙の創造、維持、破壊の原因を生じさせる唯一者。彼は自由、そして完全。彼は、彼が彼のマーヤーの三グナ、つまりラジャス、サットヴァ、タマスのそれぞれに彼御自身を反映させているときに、ブラフマー、ヴィシュヌ、マヘーシュワラというそれぞれ異なる御名をおとりになるのです。
 ああ、ラーマよ、あなたに礼拝し奉ります! あなたの蓮華の御足は、シュリーの御胸に永遠に抱かれるのです。あなたは昔、その御足のほんの少しの動きで、世界を御創りになられました。あなたの御足は、狭苦しい自己を伴ったアイデンティティを放棄した聖仙方によって瞑想されるほど、神聖なのです。
 あなたは一切の世界の起源。いえ、それどころか、あなたはその完全性において世界そのもの。そして同様に世界の支えであられるのです。あらゆる二次的存在に関わることがないゆえ、あなたは超越者であり、唯一者なのです。
 ああ、ラーマよ! あなたは音の象徴オームによって示されますが、同様に、言葉によって言い表すことのできる範囲を超越した一切に遍在される御方です。あなた御自身の中の存在の完全性を理解されるあなたは、客観性と絶対性の双方であられるのです。
 この多様性を計画するあなたのマーヤーの御力によって、唯一者であるあなたは、一切として顕現されるように見えます。――根本原因であるプラクリティ、それは類型化として展開し、世界をそれらの生産物とし、苦しみと楽しみを創造的な活動の果報とします。そしてそのような果報を生み出すものはさまざまな種類の行為(カルマ)なのです。
 あなたのマーヤーに惑わされた人々は、マーヤーの至高者としてのあなたのアイデンティティを認識せず、あなたのただの人間だと思ってしまいます。
 空のように、あなたは内にも外にも一切処すべてに遍在しております。純粋で、無執着で、不変なるあなたは、純粋意識、そして純粋実在としてのみ述べることが可能である、永遠なる、けがれなき、不滅の存在です。
 ああ、一切に遍在する御方よ! 愚かで無智な私は、如何にして実際に、真に、あなたを知ることができましょうか? ゆえに、おお、ラーマよ、私は心からの帰依を持って、百度もあなたに礼拝し奉ります。
 おお、主よ! 私がどこにいようとも、いつでも、私があなたの蓮華の御足への遮られることなき信仰心を持つことができますように。
 すべてを導きたもう至高なる魂である、あなたに礼拝し奉ります! 
 一切の帰依者を愛してくださる、あなたに礼拝し奉ります! 
 一切の感覚の征服者である、あなたに礼拝し奉ります! 
 一切のジーヴァに住みたもう、あなたに礼拝し奉ります!
 生死の輪(輪廻)からジーヴァを救済される御方、二のない一なる御方、百万の太陽のように光り輝く御方、手に弓と矢を誇らしげにお持ちになる御方、青き雲の光沢を持たれる御方、魅惑的な金色の衣で着飾れし御方、如意宝珠がちりばめられた耳飾りを身に付けし御方、そして、蓮華の花弁のように大きく、美しい眼をお持ちの、弟のラクシュマナと共におられるラーマに礼拝いたします。

 このように、ラグ族の子孫として降誕された永遠なる御方ラーマの御前で賛嘆し、周りを回り、礼拝した後、彼女は彼の前に立った。そして彼に許可をいただくや否や、夫である聖仙ゴータマに会うために、去っていったのだった。
 このアハーリヤーの賛嘆を信仰心を持って学ぶ者は、一切の罪から解放される。彼は、至高なるブラフマンに到達するであろう。
 この賛嘆を、心をラーマに結びつけて学ぶならば、子供を望む女性は、たとえ子供を生むのに障害があったとしても、一年以内に子供に恵まれるだろう。
 ラーマの恩寵によって、一切の者の願いは叶えられるだろう。
 聖者を殺生すること、ふしだらな行為に耽ること、偸盗、飲酒、両親や兄弟に向けての残虐な行為、常に五感の快楽に耽ることなどのさまざまな罪深き行為を犯している者でさえも、心をラーマに結び付けて、信仰心を持ってラーマを瞑想し、毎日この賛嘆を唱えるならば、解脱を得る。いわんや、善行を為す者においておや!

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