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アディヤートマ・ラーマーヤナ(28)「聖仙アガスティヤのアシュラムにて」

第三章 聖仙アガスティヤのアシュラムにて

◎聖仙アガスティヤとの出会い

 昼近くに、ラーマはシーターとラクシュマナと共に、アグニジフワという名のアガスティヤの兄弟の庵に到着した。
 その聖者は、彼を温かく出迎え、根と果物を施した。そして翌朝早くに起床し、彼らはアガスティヤの庵へと出発したのだった。
 その庵は、年中果物が実り、花々が咲き乱れることで有名であった。そしてそこにはさまざまな種類の動物が多く生息し、さまざまな種類の鳥たちのさえずりが鳴り響く心地よい空気が漂っていた。それはまるで天界の庭園ナンダナのようであり、ブラフマー・リシ、デーヴァ・リシ、そしてそこに住んでいる苦行者たちが足しげく通う場所であったのだ。そしてその場所は、まるでここはブラフマローカではないかという思いで、来る人を満たすのであった。
 そのアシュラムの近くで立ち止まり、ラーマはスティクシュナにこう仰った。

「どうか中に入って、私が来たことを告げてください。
 シーターとラクシュマナと共に、私が彼に会いに来たのだと、聖仙にお伝え願いたいのです。」

 「喜んでそう致しましょう」と言うと、スティクシュナは彼の師の庵へと入って行った。そこでスティクシュナは、苦行者たち、とくにラーマを信仰している苦行者たちに囲まれながら座り、ラーマの聖なる御名の意味を弟子たちに説いている聖仙を目にして、グルの御足に全身を捧げて完全なる礼拝をすると、こう述べた。

「おお、偉大なる光り輝く聖者様よ! ダシャラタの子ラーマが、シーターとラクシュマナと共に、あなたにお目にかかりに到着いたしました。彼は合掌してあなたに礼拝しながら、そこに立っております。」

 アガスティヤはこう言った。

「私の心にいつも座っていらっしゃるラーマをここにお連れしなさい。お前に祝福あれ! 私はずっと心の中に彼を瞑想し、ずっと彼に会いたいと熱望してここに暮らしていたのだ。」

 こう言うと、彼は座から立ち上がり、他の苦行者たちと共に心に偉大なる信仰を抱きながら、ラーマに会いに行ったのである。

「おお、ラーマよ! ここにお入りください。私は今あなたに会えて本当に幸せです。あなたは私の客としてここにわざわざ来てくださいました。今日は本当に、私の人生の目的が成就された記念すべき日であります。」

 聖者が近づいて来ると、ラーマとシーターとラクシュマナは歓喜を溢れさせながら彼に挨拶し、棒のように地面に身を投じて礼拝した。
 大聖仙はラーマを抱え起こすと、偉大なる信仰を抱きながら彼を抱擁した。ラーマの身体に触れることによって生じた至福は、アガスティヤの眼を絶え間ない涙で濡らしたのであった。
 その大聖仙はラーマの御手をつかむと、大いに高揚した心持ちでアシュラムへと彼を連れて行った。
 彼はラーマを心地の良い座に座らせると、非常に入念に彼に礼拝を捧げ、森でとれる数種類の果物や根を彼に捧げたのであった。

◎アガスティヤの賛美

 月のようなお顔のラーマが座に座ると、聖仙アガスティヤは合掌して礼拝し、このように言った。

「ブラフマーが地球からその重荷を取り除き、ラーヴァナを破滅させるために乳海の岸であなたに祈られた日・・・・・・その日から私は、あなたの御到来を期待してここで待っておりました。私はこの場所の苦行者たちと暮らして苦行を行い、あなたに会いたいと切望しながらあなたを絶えず思っていたのです。
 創造のサイクルが始まる前には、ただあなただけが、修飾されることなく、一切の付加条件なく、存在しています。そこには、あなたから分離して存在することなく、その中にすべての多様性と潜在的付加条件と共にあなた御自身が潜在していらっしゃるマーヤーとして語られるあなたの潜在力があります。
 マーヤーはあなたによって装われるや否や、それ自体で顕現します。ヴェーダーンタの学者たちはそれをアヴィヤクリタ――非顕現的全体性――と呼びます。ある者はそれをムーラプラクリティ(根本自性)、そしてまたある者はマーヤー(魔術)と呼び、さらにある者はアヴィディヤー(無明)やサムスリティ(輪廻流転)やバンダ(繋縛)と呼ぶのです。
 あなたの指示の下、彼女(マーヤー)はマハータットヴァ(大元素)を現します。マハータットヴァから、あなたの働きかけの下、アハンカーラ(無限の「私」という感覚)が展開するのです。
 マハーマットヴァの現れであるアハンカーラは、三つの要素――サートウィカ、ラージャシカ、ターマシカとして顕現します。
 タマスによって支配されたアハンカーラからは、事象(ターマシカ)の微細な本質が展開し、それらからは整然と順序を追って、粗雑な元素――アーカーシャ(空)、ヴァーユ(風)、アグニ(火)、ジャーラ(水)、ブーミ(地)が展開するのです。
 ラージャサ・アハンカーラからは、インドリヤ(感覚器官)が展開し、サートウィカ・アハンカーラからは、デーヴァター(天人)とマナス(心)が展開します。それら一切の展開の組み合わせによって、宇宙の原因体【コ―ザル体】(リンガ)が形成され、それはその中に宇宙の全潜在性を含有しているのです。それはまた、ストラートマ(遍在する自我意識)やヒランニャガルバ(光り輝く潜在性)とも呼ばれています。
 ヒランニャガルバから、動、不動の一切の存在と共に、全宇宙から粗雑な身体が構成されるところの無限なる全体性(ヴィラータ)が現われます。
 そして時が経つにつれて、あるいはカルマの潜在力の顕現に従って、デーヴァ、人間、そして動物が出現するのです。ラジャスの要素を装い、あなたは宇宙の創造神ブラフマーとなります。
 賢者はサットヴァの要素を装って守護神ヴィシュヌとなり、タマスの要素を装って宇宙の破壊神ルドラとなるのです。このように、トリムルティ(三位一体の存在)と呼ばれるものは、あなたに他ならないのです。
 サットヴァ、ラジャス、タマスのその要素から生まれるブッディの三つの状態である覚醒、夢、睡眠の三つの状態は、真にあなた御自身なのであります、おお、ラーマよ。あなたは同様に純粋意識、不変、そして超越者であり、目撃者として立ちながら、ブッディとその三つの状態とは異なっています。
 おお、ラグ族で最も気高き者よ! あなたが創造のリーラーを演ずる時、あなたは御自身の力のマーヤーを装い、サットヴァ、ラジャス、タマスのグナを負わされた者としてお現れになります。
 おお、ラーマよ! あなたのマーヤーには二つの要素――ヴィディヤー(明智)とアヴィディヤー(無明)――があります。仕事、ヴェーダ、そして俗事に専心している者たちは、アヴィディヤーの支配下にあり、一方、ヴェーダーンタの趣旨についての思索や、あなたへの信仰の実践に没頭し、放棄の道に付き従っている者たちは、ヴィディヤーの力に満ちているのです。
 アヴィディヤーに支配された者たちは、永遠に輪廻流転に追いやられ、一方、ヴィディヤーに献身する者たちは、永遠なる自由を得ます。
 この世において、ヴィディヤーはあなたへの絶え間ない信仰を持ち、常にあなたの聖なる御名を唱え、それについて熟考している者たちの中に光り輝くのであります。
 ゆえに、信仰(バクティ)を持つ者たちは、真にムクティ(解脱)の恩恵を受け、一方、信仰の不滅の素晴らしさに欠けている者たちは、夢の中でさえも、モークシャ(輪廻からの解脱)を経験する望みはないでありましょう。
 これ以上何を言う必要がありまましょうか、おお、ラーマよ! 私は献身的な人生のために最も本質的に要求されるものを、あなたの御前で述べさせていただきます。
 聖者との交わり、これが解脱に達するための一つ目の本質的な手段です。
 サードゥ(真に聖なる者)とは、美徳――友、敵、中立者を含む一切の者に対しての平等心、無欲、外界の対象に関する感覚の制御、三つのエーシャナ(子供への欲求、富への欲求、天界の快楽への欲求)の放棄、完全なる自制から生じる心の平穏、あなたへの最上なる献身、成功と失敗においての心の平静、一切の執着の不在、一切の悪業と利己的行為の放棄、ブラフマンを熟考することに興味を持ち続けること、ヤマや他のヨーガの戒律の実践、そして求めることなく自然に与えられた生活手段のすべてに満足すること――に従うことを見出した者であります。そのようなものが聖者の性質です。
 彼らとの親しい接触は、神聖なる美徳と価値という意味での歓喜を生じさせます。そのような歓喜が心に確立されると、神への愛に溢れた信仰心(バクティ)が生じるのです。
 バクティは、神の明晰で包括的な悟りを生じさせます。これは、十分に優れた識別力を持つ者によって選択された、解脱への王道なのであります。
 ゆえに、おお、ラーマよ、どうか私が、あなたへの強烈な愛を特徴としたバクティを得ることができますように! 私が、おお、ハリよ、とりわけ、あなたに完全に身を捧げている聖者との接触を得ることができますように。私の人生の目的は今日、あなたと出会ったことによって達成されました。
 今日、私が実践してきた一切のヴェーダの儀式は実を結んだのです。長い間、私は、あなたのこと以外一切思うことなく、苦行を実践してきました。おお、ラーマよ! 化身としてとられたこの姿のあなたに愛を捧げるというこの好機を通じて、今日私が授かったこの祝福は、私が実践した戒と苦行の結果なのです。
 あなたがシーターと共に永遠に私の心の中に住まわれますように。そして、何か仕事に従事していようが、休んでいようが、どんな状況でも、絶えず私の心にあなたへの思いが生じますように!」

 

 このようにラーマとシーターを礼拝すると、偉大なるリシ・アガスティヤは、インドラがラーマに渡す目的で彼に委ねた弓をラーマに捧げた。彼はまた、矢が一切尽きることがない矢筒と、宝珠がちりばめられた剣を彼に捧げて、こう言った。

「おお、ラグ族の子孫よ! これらを使って、地球の重荷となっているラーヴァナの一族を滅ぼしてください。あなたが人間の御姿で化身されたのは、そのためなのです。
 ここから約二ヨージャナ行くと、聖なる森に囲まれたゴータマ河の岸辺に、パンチャヴァティというアシュラムがあります。おお、ラグの末裔で最も気高き者よ! あなたはその場所で残りの森での生活を過ごしてください。
 おお、聖者たちの守護者よ! そこであなたはデーヴァたちのための多くの目的を成就することができるでしょう。」

 全智全能のハリそのものであられるラーマは、アガスティヤの非常に意味深長な賛美と彼から与えられた助言を聞くと、聖者から示された方角へと、大いに満足しながら姿を消していったのだった。

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