「ブラフマ神の昼と夜」

◎ブラフマ神の昼と夜

【本文】
『千ユガの期間が創造神ブラフマの一日の昼の長さであり、夜の長さも千ユガであることを知る人は、
　昼と夜の長さを真に知っている人といえよう。

　ブラフマ神の一日が始まると、あらゆるものが姿なきところから現われ、
　ブラフマ神の夜が訪れると、それらは再び姿なきところへと消えてしまう。

　おおプリター妃の息子よ！　万物は何度も何度も現われては、
　夜の訪れとともに消え、日の昇るとともにまた出現する。』

　ここでブラフマ神の夜とか昼とかいってるのは、ブラフマ神が――これは仏教の考えを引用したほうがわかりやすいと思うんだけど、ブラフマ神、つまり梵天の世界よりも更に高いところに、仏教の言葉をいうと光音天という世界があります。これはまだ絶対の世界ではありません。ただし梵天をさらに超えた世界だね。この光音天っていうのは物質宇宙を超えた世界なんだけど、そこからある一つの魂が落っこちます。落っこちて、この物質宇宙を創りだすんだね。創りだすっていうのはどういうことかっていうと……これは前からいってるように、この宇宙っていうのは別にいつも外側に存在していて、そこにわれわれが落っこってきたっていうよりは、われわれの心がこの宇宙を現わすような心の働きをしたから、われわれはこの宇宙を認識してるって考えた方がいい。
　でもある時期、このブラフマ神の夜っていわれる時期っていうのは、誰もこの欲望の世界を生み出すような心の働きをしてない時代があるんだね。虚空期っていわれる時代があります。でもこのブラフマ神――実際は大梵天ていうんだけど、大梵天になるべき運命の魂が光音天から落っこちるときに、つまりこの欲の世界を生み出すような心の働きをしだすんです。それによって宇宙ができてしまうんです。これがブラフマ神が目覚めたっていってる比喩なんだね。
　だからここでいう目覚めっていうのは、良い意味での目覚めではない。欲に目覚めちゃった。この現世を創りだすような心に目覚めちゃったってことです。これによってこの世界が生み出され、そこにその世界の要素を持った魂がみんな引きずりこまれていくんです。これがこの欲の世界の、つまりわれわれが住んでる輪廻の創造と破壊だね。
　ブラフマ神の夜っていうのは言い方を変えれば、われわれが全員がですよ、この欲の物質宇宙にいるほとんど全員が解脱して、光音天以上の世界に行く時代があるんです。このときにはブラフマ神も光音天に入ってしまうから、世界は消えるんだね。これがブラフマ神の夜。
　つまりわれわれの、この欲の世界を作り出してる中心的な神がいるんだね。彼の心の働きによってこの世界は生み出され――まあ彼だけじゃないんだけどね。彼と運命を共にしてるわれわれがすべて解脱することによって、彼もまたこの幻影の世界の人生からまた光音天の世界に入っていく。これを夜といってる。言ってる意味わかるかな？　それを何度も何度もこう、繰り返してるんだね、われわれはね。
　これは何度もいろんな話で言ってるよね？　同じような話はね。
　もうちょっとリアルに言うとね、これは仏典の引用をするとね、多くの仏陀とか菩薩が現われて人々を解脱させていくわけだね。で、仏典の一応その未来のヴィジョンでいうと、お釈迦様の次に――これは五十六億年後といわれてるんだけど、弥勒菩薩だね、いわゆるマイトレーヤだね。パーリ語ではメッテイヤっていうんだけど。この弥勒菩薩があらわれて、最後の救済をすると。つまり五十六億年かけて準備をしてね、いろんな人に機根を植えつけて、最終的にみんなこの輪廻から救ってしまうと。救うってどういうことかっていうと、中には完全に解脱してニルヴァーナにいく人もいるだろうし。でも最低さっき言った光音天以上には行かせるんです。最低この輪廻を超えて、梵天も超えた、光音天以上には放り込むと。で、さっきほとんどって言ったのは、このときも救われない奴がいるらしいんだね。これはどうなるのかっていうと、もう他の人みんな卒業しちゃったから、宇宙なくなるから、他の宇宙の地獄に行くんだと。これ壮大な話でしょ？　宇宙は一つじゃないという。他の宇宙の地獄に行ってしまうと。それはまあ本当にわずかなものなんだけど。ほとんどが光音天以上に救われてしまう。その中のさらに一部が完全に解脱するんだけど。
　完全に解脱はできないけども光音天に行った魂っていうのは、また宇宙ができると落っこちて来るんだね。で、またこの世でいろんな経験をして、また修行して、解脱して光音天に行くと。これを繰り返してる。
　だから単純な意味での解脱っていうのは、完全な安住ではないんです。単純に今われわれが持ってる悪い要素を止めね、ストップさせて、「はい。いい世界行きました」と。これは完全じゃないんだね。
　だからいつもいっているように、菩薩の道とかを歩いて、完全な全智だね、完全な悟りを得る必要がある。そうなったらもう完全に自由だけども、ほとんどの場合は将来的にみんないったん解脱するんだけど、それは中途半端な解脱で、また落っこちてきますよと。これを壮大な時間をかけて繰り返してるんだね。ずーっとね。これがこの宇宙の創造と破壊の繰り返しだと。