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「グル・リンポチェ」(2)

◎誕生と追放と修行

 仏陀の死の八年後(またはある資料によると十二年後)、縁起の良い身体的な印をつけたアミターバ如来の顕現が、ウッディヤーナの国の北西部で、素晴らしいサインの中、人間の女性の子宮からではなく乳海の中の蓮華から、一点の曇りもない出生をとげました。

 その頃、ウッディヤーナには、インドラブーティという寛大で偉大な王がおり、彼は長年、貧しい人々のすべての物質的望みを叶え続けました。またインドラブーティは視力を無くしてしまっていましたが、彼には後継者として王座につくべき子供がいませんでした。
 あるときインドラブーティ王は、他の大臣たちの反対を押し切って、彼の忠実な大臣であるクリシュナダラと多数の従者と共に、国民の要望に応えるために、宝石を探しに海に旅に出ました。彼らは宝石を獲得し、その宝石の力によって王の視力は回復しました。
 そこで王と大臣たちは、乳海の真ん中の蓮の花に座る、驚くばかりに美しい八歳ほどの子供を見ました。驚愕した王はその子供に尋ねました。

「お前の両親は誰かな? 家系は? お前の名は何というのだ? 何を食べているのか? ここで何をしているのか?」

 その子供は魅惑的な声で、次のような歌を歌いました。

「わたしの父は、本質的覚醒である、サマンタバドラ。
 わたしの母は、究極的領域である、サマンタバドリー。
 わたしの血統は、本質的覚醒と究極的領域。
 わたしの名前は、荘厳なる、「蓮華から生まれた者(パドマサンバヴァ)」。
 わたしの国は、生まれることのない究極的領域。
 わたしは、食物として二元的思考を吸収する。
 わたしの役目は、仏陀の仕事を遂行すること。」

 それを聞いていたすべての者の心に、信と歓喜が芽生えました。王は子供を一緒に連れて帰り、自分の養子にして後継者にしました。そして彼は、蓮華から生まれた者(パドマサンバヴァ)、またはパドマカラとして知られるようになりました。

 インドラブーティ王や家臣たちは繁栄に恵まれ、王はすべての人々に贈り物を惜しみなく与え続けました。そうして国中に幸福と平和が広がっていきました。
 若き王子パドマサンバヴァは、さまざまな教育を受けました。彼は特に勉学と体育に優れていました。そして王子はダーキニーであるプラバーヴァティ(一つの光明)と結婚し、ダルマに従って、インドラブーティ王に仕えました。

 グル・リンポチェは、王という役割によっては、他のための霊的に価値あることや、真に必要なもののために尽くすことはできないと知っていました。彼はインドラブーティに王国を放棄したいと申し出ましたが、拒否されたため、王宮からうまく脱出できる方法を探しました。そして彼は、予知能力によって、大臣カマタの不道徳な息子が宿命によってもうすぐ死ぬという事実を知りました。そこで彼らが踊っているときに、グル・リンポチェは、カマタ少年の手から三叉戟を落とさせ、それが少年の死因になりました。王国の厳格な法に従って、インドラブーティ王は嘆きながらグル・リンポチェを火葬場に追放しました。
 グル・リンポチェは、王族の両親に、次のような別れの歌を歌いました。

「親の優しさに出会うのは稀有であるが
 あなたはわたしを育て 王位を与えてくれた。
 負のカルマによって、大臣の息子はわたしに殺された。
 たとえ追放されようとも、何の恐れもない。だれへの愛着もないから。
 たとえ処刑されようとも、何の恐れもない。生と死は同一であるから。
 追放されても問題はない。国のための法は敬うべきであるから。
 父上、母上、どうぞお元気で。
 輪廻のカルマにより、わたしたちは再会するでしょう。」

 そしてグル・リンポチェは、シータヴァナという火葬場へ追放されました。その場所で彼は深遠な修行をおこないました。

 次に彼はナンダナヴァナという火葬場へ行き、マラジタ(否定的パワーの支配者)というダーキニーから深遠なエンパワーメントを受けました。

 次に彼はソーサドヴィーパという火葬場へ行き、シャーンタラクシタ(平和の管理者)というダーキニーから祝福を受けました。多くのダーキニーたちを指揮し、グル・リンポチェは、さまざまな火葬場で、深遠な修行を味わい楽しみました。

 次にグル・リンポチェは、ダナコーシャという島へ行って、象徴的言語を使い、ダーキニー達を支配下に置きました。

 パルーシャカヴァナの火葬場では、深遠な修行を実践しているあいだ、彼はヴァジュラヴァーラーヒーの純粋なヴィジョンを見て、彼女の祝福を受けました。
 智慧のダーカと智慧のダーキニーたちは、グルリンポチェに智慧を注ぎました。彼はその時、「力強い憤怒のヴァジュラ」と呼ばれていました。

 次にグル・リンポチェは、ブッダガヤーのヴァジュラーサナへ行き、自分が自己の本性を悟った仏陀であることを打ち明け、様々な奇跡を示してみせました。

 そして様々な目的を心に秘めてサホール国へ行き、グル・プラバーハスティから、現世放棄の儀式を受けました。彼はその時、シャーキャシンハ(シャーキャ族のライオン)として知られていました。

 グル・リンポチェは、ヨーガ・タントラの教えを十八回受けて、ヨーガ・タントラの神の純粋なるヴィジョンを見ました。

 そしてグル・リンポチェは次に、尼僧の姿をとった智慧のダーキニーであるアーナンダーからエンパワーメントを受けました。彼女はグル・リンポチェをフーム字に変えて飲み込みました。アーナンダーの体の中で、グル・リンポチェは、完全なる外側と内側とそして深遠なるエンパワーメントを授かり、そのあと彼女は蓮華を通して体からグル・リンポチェを外に出しました。

 次にグル・リンポチェは、八人のヴィディヤーダラ(持明者)である、マンジュシュリーミトラ、ナーガールジュナ、フーンカラ、ヴィマラミトラ、プラバーハスティ、ダナサンスクリタ、ロームブグヒャ、そしてシャンーティガルバから、エンパワーメントと八つのマンダラの教示を受けました。

 ブッダグヒャからはグヒャガルバ・タントラを受け、マンジュシュリーミトラからはゾクチェン、特にニンティクを受けました。

 また彼はシュリーシンハに会い、二十五年ものあいだ、カンドゥ・ニンティクの教えとメンガグデのタントラを学びました。

 こうしてグル・リンポチェは、具体的な瞑想や修行をせずとも、多数の神々の純粋なヴィジョンを見るようになりました。
 その頃彼は、「賢き至高の情熱」として知られていました。

 仏教のスートラの流儀では、成就のステージは十のステージと五つの道として分類されており、それらはブッダフッドへ到達するための段階です。タントラの流儀では、そのステージは他の様々な方法によっても分割または分類されています。ニンマ派タントラ経典のほとんどには、「持明者(ヴィディヤーダラ)」と呼ばれる四つの達成段階があります。

 「残余を持つヴィディヤーダラ」は、四つのヴィディヤーダラうちの一番目であり、それは三つの特性を持ちます。 
 1.その思考は神のように完璧かまたは成熟している。
 2.しかしながら、カルマの残余によって、粗雑な物質的肉体を放棄していない。
 3.肉体を放棄した(すなわち死)あと、直ちに三番目の達成であるマハームドラー・ヴィディヤーダラの境地に到達する(これについては後述する)。

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