要約「アビサマヤーランカーラ」(1)「この論を作る趣旨」
要約「アビサマヤーランカーラ」
このシリーズは、マイトレーヤの「アビサマヤーランカーラ」をもとにしていますが、私の独断により、要約し、いろいろ加えたり削ったりアレンジしたりしていますので、ご了承ください。
「アビサマヤーランカーラ(現観荘厳)と名付ける、智慧のパーラミターのウパデーシャ・シャーストラ注釈」の要約
ニルヴァーナを望んでいる声聞たちを、一切智の本質によってニルヴァーナに導くものであり、
衆生済度をなす者たちの世界への利益を、道智の本質によって成就させるものであり、
一切相智の本質であるバガヴァティーと合一したムニたちは、一切の行相を有したこのすべてを説くのであるが、
その声聞や菩薩の衆を伴ったバガヴァティー(母なるブッダ)に対して帰依したてまつる。
序章
1.この論を作る趣旨
一切相智者の本質への道が、世尊によってプラジュニャー・パーラミターにおいて説かれたが、通常は体験することができないそれを、智慧をそなえた者たちは、この論によって理解するであろう。
そして二万五千頌プラジュニャー・パーラミターの意味である十の法行(ダルマチャリヤー)を念に止めて、容易に理解できるようにというのが、この論を作る目的である。
2.八つの言葉の意味
プラジュニャー・パーラミターは、次の八つの言葉の意味によって正しく説明される。
①一切相智の本質(サルヴァーカーラジュニャーター)
②道智の本質(マルガジュニャーター)
③一切智の本質(サルヴァジュニャーター)
④一切相現正覚(サルヴァカーラービサンボーダ)
⑤頂に至ったもの(ムールダプラープタ)
⑥次第のもの(アヌプールヴィカ)
⑦一切を一瞬に現正覚する(エーカクシャーナービサンボーダ)
⑧法身(ダルマカーヤ)
第一章 一切相智の本質(サルヴァーカーラジュニャーター)
1.発菩提心
1-1 定義
発菩提心とは、利他のために最上の正しい覚醒を得ることを願うことである。
その最上の正しい覚醒と利他は、二万五千頌プラジュニャー・パーラミターに説かれるのと同様に、八千頌プラジュニャー・パーラミターにはコンパクトな形で説かれ、十万頌プラジュニャー・パーラミターには詳細な形で説かれている。
1-2 比喩
発菩提心は、22の比喩によって示される。
①一切の白き法の基礎となるから、大地のようである。
②悟りを得るまで変化しないから、美しい黄金のようである。
③一切の善法が増大するから、新月のようである。
④三智の障害を焼くから、火のようである。
⑤一切の衆生を満足させるから、巨大な倉庫のようである。
⑥功徳という宝が生まれ出るから、宝石の鉱脈のようである。
⑦一切の望まないものに遭遇しても動揺しないから、大海のようである。
⑧信念が堅固で破壊されないから、ダイヤモンドのようである。
⑨対象の散乱によって動揺しないから、山のようである。
⑩煩悩障と所知障という病をしずめるから、偉大なる薬草のようである。
⑪あらゆる状態において衆生の利益を捨てないから、素晴らしき友のようである。
⑫願いのままに果を成就するから、如意宝珠のようである。
⑬救済の対象という穀物を成熟させるから、太陽のようである。
⑭救済の対象を引きつける法を説くから、甘い歌声のようである。
⑮無敵の威力によって利他をなすから、大王のようである。
⑯多くの功徳と智慧の資糧の貯蔵庫であるから、蔵のようである。
⑰一切の聖者がこれまでもこの道を行き、これからも行くから、大道のようである。
⑱輪廻とニルヴァーナのいずれにも落ちることなく、容易に衆生を運ぶから、乗り物のようである。
⑲尽きることなくあらゆる法を保持するから、泉のようである。
⑳解脱を願う衆生に歓喜の法を聞かせるから、喜びの言葉のようである。
21区別なく利他行をなすから、河の流れのようである。
22トゥシタ天に住するなど、衆生の利益のためのあらわれをなすから、大きな雲のようである。
2.菩提心の目的を獲得する方法
菩提心の目的を獲得する方法は、分類すれば以下のようになる。
①大乗の行
②四つの真理
③三宝帰依
④無執着の精進
⑤怠惰のない精進
⑥大乗の道を摂取すること
⑦五つの眼
⑧六神通
⑨見道
⑩修道
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