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懺悔と回向の勧め

 ほんの小さな苦しみから、きわめて大きな苦しみに至るまで、すべての苦しみは、過去になした悪しき行為によって生じます。

 ほんの小さな幸福から、きわめて大きな幸福に至るまで、すべての幸福は、過去になした善き行為によって生じます。

 このように、すべては自己の身体と言葉と心の行ないの果報であり、それ以外の現象というのは生じえません。これはインドに端を発する東洋の多くの宗教に共通のベースとなる概念です。ヒンドゥー教の一部にはこういった因果の法則を認めない派もありますが、少なくとも仏教の派はすべて、この基本法則を認めています。

 しかも、ほんの小さな悪しき行為から、大きな苦しみの果報が生じることもありますし、また、ほんの小さな善の行為から、大きな幸福の果報が生じることもあります。
 それはなぜでしょうか? カルマの法則は本来、数学的な法則なので、因と果は等価ではないかと考えるかもしれません。
 しかし実際は、ある行為をなしたとき、その経験は心の奥へと刻まれるわけですが、これがたとえば悪業をなした場合、心の屈折や傷、汚れ、後悔として、本人が気づこうと気づくまいと、心の奥で成長していきます。 
 つまりある悪しき行為をなしたとき、そのときだけで悪業が終わるわけではなく、その後もある意味、心のカルマを積み続けることになるのです。それは気づかぬうちに膨大に成長し、それが果報として現象化するときには、膨大な苦しみとしてかえってくることになります。
 さらに、その心の屈折や汚れによって、苦しみに弱い心の状態になってしまっていますから、実際に感じる苦悩はさらに激しいものとなるでしょう。

 これに対抗するのは、懺悔の修行が一番です。できれば毎日、懺悔をするといいです。夜寝る前に。あるいは昼間も、何か自分の悪しき心・言葉・行ないに気づくたびに、懺悔をしてください。
 懺悔の仕方は簡単でもかまいません。心に神や仏陀や聖者などを思い描き、その対象に対して、

①悪業の告白と謝罪
②もう二度とそれをしないという決意
③浄化をしてほしいという祈り
④浄化されたという確信

この四つを繰り返します。
 懺悔は、後悔ではありません。心を浄化し、明るくするためのプロセスです。
 懺悔は、早いほど効果があります。まだ悪業が心に染み渡っていないからです。しかし昔なした悪業なども、繰り返し根気強く懺悔し続ければ、必ず浄化されます。
 もちろん、懺悔をしたからといって、悪因が悪果として返らないというわけではありません。逆に、心の浄化によって、カルマの返りは早くなるでしょう。
 しかし心の整理が懺悔によって行なわれるので、悪因より増大された悪果が生じる確率は減ります。また、懺悔とともにさまざまな修行を行なうことにより、心の許容量は増え、苦しみに強い状態になるので、実質的に感じる苦悩は少ないものとなるでしょう。
 

 ところで、では逆に、何か良い思い・良い言葉・良い行いをなしたときに、その果報をさらに増大させるにはどうしたらいいと思いますか?
 その善の因から生じる果報を、放棄してください。
 カルマの法則から言えば、善の行為によって幸福がやってくるはずだけど、それは私は他の魂に譲り渡そう。私の善き行ないの果報が、私に生じませんように。すべての魂の幸福として生じますように。私が修行したり善を行なって積まれた善いカルマによって、すべての魂が幸福になりますように。 
 このように考えてください。これが、皆さんが積んだ徳をさらに増大させる方法です。自分が積んだ徳の果報を放棄し、他にささげようとする者は、結果的に増大された幸福の果報を得るでしょう。

 なぜでしょうか? それはいろいろな深い意味があるんですが、二つだけ理由を挙げましょう。

 一つ目は、まずこのような心の訓練がなされれば、すでにその人は何もしないでも幸福になるでしょう(笑)。そういう豊かな心がはぐくまれれば、それだけでも相当、幸福な人になります。そして人生のあらゆることに、幸福を感じられるようになるでしょう。
 結局、幸福というのは形で生じるものではないんですね。たとえば「結婚」という形に入れば誰もが幸福になるわけではないし、「お金持ち」という状態になれば幸福になるというわけでもない。それはすべて形に過ぎない。すべてはカルマと、その中で幸不幸を感じる心の成熟度の問題なんだね。
 だから条件を整えるよりも、心の成熟の訓練をすべきなんだね。幸福になりたかったら。

 もう一つは、幸福を他に与えようとする意志を持つ者は、カルマの法則からいって、他の者から幸福を与えられる人になるでしょう。また、自分よりも不幸な者に自分の幸福を差し出そうとするなら、逆に自分よりさらに幸福な神々などから、幸福の祝福を与えられるようになるでしょう。

 

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