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「解説『スートラ・サムッチャヤ』」第10回(3)

◎心の水を透明に

 で、もう一回言うけども、完全な目が開いたときっていうのは、師匠とかじゃなくて、この世界そのものが、バガヴァーンそのものに見えると。で、バクティヨーガとか、あるいはまあ密教とかヨーガのグルヨーガとか言われるものの方向性っていうのは、その部分を、より能動的に積極的に推し進めようとしてるんだね。つまり皆さんが見てるのは幻影ですよと。で、大乗仏教で言うと、もちろん、全員を仏陀と見ろとかね。うん。全員を、その聖なる要素を含んだ――つまり仏性を持った者として見ろって言うわけだけど。まあそれはそれでもちろんいいんですけども――じゃなくてその、師匠にそれを集中させるんですね。まず、師匠でさえ仏陀と見れない者がね、この世界をバガヴァーンと見れるわけがないじゃないかと。うん。だから最も尊敬すべき師匠にまずその集中をするんだね。まずは師匠のことを、完全なる、何のけがれもない絶対者として見なきゃいけないってところから始まって、周りに広げていくわけですけども。
 でもその最初の段階でそれをやる理由っていうのは、別にその、なんていうかな、それをやることによって素直に教えを受けることができるっていう表面的な意味じゃなくてね。それをやることによって突破しようとしてるんだね。うん。自分のその――まあさっきの例えで言ったら、ウワーッって広がったときだけ、師匠が仏陀に見えると。グワーッってヘドロが狭まると、師匠が普通の人間に見えると。意識的に師匠を完全な仏陀と見ることを続けるってことは、つまり意識的にヘドロをグワーッと広げて透明な水面を出してるんです。あるいはヘドロをグーッとこう掃除してるっていうか。
 それはね、皆さんには分からないんだよ。分からないっていうのは、例えばY君がその努力をしてたとしても、あの、なんというかな、自分の中で何が起こってるか分からない。何が起こってるか分からないんだけども、Y君の中で確実にヘドロみたいなのがこうどんどん減ってるんだね。減っていって減っていって、その、なんていうかな、その結果的な、智慧の目みたいなのが開く準備が整ってくるというかな。
 この器の例えっていうのは、ヨーガでも仏教でもいろんなふうに例えとして出るんだね。これは非常に面白い。面白いっていうのはいろんな、こう、なんというか応用ができるから。応用っていうのは例えば、今言ったように、皆さんの心のけがれの例えとして、今のヘドロっていうのがある。心がけがれてると、それがヘドロのようになって、真実を映し出せない。だからその、仏陀の光も受け取ることができない。
 心が色に染まってると――これはその偏見とか執着の例えですけども――あの、ある程度きれいなんだけど、その、こだわりがあったりとか、あるいは自分の考えとかにこだわりが強いと、色がつくんだね。うん。だから、仏陀には出会えるけども、ちょっと色がつく。例えば、「いやあ、わたしは先生を素晴らしいと思ってるんです」って言うんだけど、なんか、すごいなんか自分なりの解釈が入ったりする。これはちょっと色がついたパターンだね。
 あるいは、怒りのパターン。この怒りのパターンっていうのは、よく沸騰――マグマみたいな、沸騰としてこう、例えられる。つまり沸騰してるから、そこに映った太陽みたいなものも、なんていうかこう、まあ落ち着いてないっていうかな。うん。だからすごくその、太陽がきれいに見えるときもあるけど、見えないときもあると。すごくその、心の散動状態があるっていうかな。
 あるいは、そもそも器に蓋がされてる場合。もしくは器がひっくり返っている場合。これは完全にその、プライドであるとか頑固さによって、まあなんていうかな、エゴにとらわれすぎっていうか。つまり、衆生にも心開いてないし、あるいは神とか師とかにも全く心開いてない場合ね。うん。「自分、自分」っていうのが強過ぎる場合は、これはまさに蓋がされた状態になります。だからもう濁るとかそれ以前の問題ですよね。蓋開けても濁ってるかもしれないのに、蓋閉めちゃってるっていう(笑)、なんていうかな、そういう状態だね。
 だからわれわれは、もう一回言うと、まず心をオープンにして、神に対して、あるいは仏陀に対して心を開いて、そして自分の心のけがれっていうのを、どんどんどんどん、浄化していかなきゃいけない。そして同時に、心を浄化するっていう、例えば日々の懺悔とか、戒律とか教学とかそういった地道な訓練と同時に、バクティヨーガとかで言ってるような、至高者への見方、至高者への完全なる愛。あるいは自分の師や聖者を至高者の完全な現われと見るとかね。うん。この方面の努力によって――まあつまりイメージで言うと、その土台の浄化と同時に、上からグワーッてこう開いてくれるっていうかな。この二重の効果によって、われわれのその、心の水っていうかね、心の水みたいなものが、非常に透明になってくるんだね。

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